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カウネット、CX向上を経営指標に組み込み顧客との長期的な信頼を築く
「Digital Commerce Frontier 2026:BtoB EC Day」より、CXデザイン本部 本部長の上山 哲史 氏
さらなるプロミスブレイクを発見するため、アンケートや市場調査、コンタクトセンターのスタッフ、販売店、社員といったステークホルダーにはヒアリングを実施した(図1)。集まった情報から「113件のプロミスブレイクをリストアップし、大小ある種々の課題への対処を1つずつ進めていった」と上山氏は説明する。
AI技術は、コンタクトセンターの品質管理(QC)活動にも適用している。そこではオペレーターとのやり取りをテキストデータ化し、応対品質をスコア化したうえで、担当者ごとに改善点を指導する取り組みを始めている。「従来は担当者2人で月60件のチェックが限界だったが、月間1万件のチェックが可能になった」と上山氏は強調する。今後も「クレーム件数などで成果を確認していく」(同)方針だ。
CXの進捗を経営指標にも設定する
CX向上への取り組みは、経営陣が重視する指標そのものにも変化をもたらしている。これまで経営層は、売上や利益の話題を中心に議論することが多かった。「現在は欠品率、遅延率、受注停止率を『CX経営指標』として数値化し、経営層が継続的に確認しながら改善策を議論する仕組みを整えた」(上山氏)という(図2)
またコンタクトセンターでは、応答率と応答待ち時間を可視化の対象に加えた。すでに指標としての応答率は設定されていたが「応答待ち時間は厳密な管理の対象外だった」(上山氏)という。
そこで宮崎/札幌コンタクトセンターでは応答率の目標を90%から95%に引き上げ、新たに応答待ち時間の目標を20秒に設定した。「当初は無理だという声もあったが、大きな目標を掲げてプロセスを変えていくことで、今では普通に目標を達成できている」と上山氏は強調する。
指標の刷新と平行して、具体的な施策も積み重ねている。欠品率の改善に向けては、適正在庫の考え方そのものを「欠品率の改善を目指した在庫」と見直した。また遅延率の低減に向けては、従来人手に頼っていた需要予測にAI技術を導入。実際に指標が改善し、上山氏は「在庫金額の削減も両立できた」と話す。
顧客対応の面では、Web上で注文を即座にキャンセルできる仕組みを追加し、クーポン利用注文は返品不可とする従来ルールも廃止した。これらの施策により「キャンセルや返品に関する問い合わせ件数は94%減少した」(上山氏)という。さらに電話偏重のサポート体制を見直し、FAQ(よくある質問と答)やチャットボット、有人チャットを整備するなど「テクノロジーを活用した顧客サポートの底上げにも取り組んでいる」(上山氏)最中だ。
非常時にも揺るがないCXの基盤を作る
今後の方向性として、上山氏は「(1)CX改善の仕組み化、(2)課題への優先順位付けの2つの課題がある」と話す。
CX改善の仕組み化では、問題に気付いた人が継続的に改善サイクルを回せる仕組み作りへと軸足を移す。上山氏は当初「プロミスブレイクの発生要因を取り除けば、問題自体をなくせると考えていた」という。しかし、事業環境や顧客の期待は変化し続けるため、ある時点で有効だった施策も5年後には通用しなくなるおそれがある」(同)と方針を改めた。
課題の優先順位付けでは、主にトラブルに伴う影響の大きさなどに基づいて優先順位を付け、重要度の高い課題から対応していくことで、さらにCXの向上を図る。実際、競合他社のシステムトラブルが発生した際は「カウネットに通常を上回る注文が集中し、社内でも想定外のトラブルが起きた」(上山氏)という。その要因を上山氏は「CXの改善活動が十分でなかったため」と分析する。
プロミスブレイクの発見数は増やしてきたものの「対象となる課題の数が増えるほど、現実的にすべてに対応することは難しくなる」(上山氏)とみる。講演の最後に上山氏は「さらなる事業成長に向けては、非常時にこそCXの真価が問われる」と力を込める。

