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カウネット、CX向上を経営指標に組み込み顧客との長期的な信頼を築く
「Digital Commerce Frontier 2026:BtoB EC Day」より、CXデザイン本部 本部長の上山 哲史 氏
購買管理システムの提供やオフィス消耗品など、EC(電子商取引)サービスを展開するコクヨグループのカウネットは、欠品率や遅延率といった指標を「CX(Customer Experience:顧客体験)経営指標」に組み込み、顧客との長期的な信頼構築を目指している。同社 CXデザイン本部 本部長 上山 哲史 氏が「Digital Commerce Frontier 2026:BtoB EC Day」(主催:インプレス ネットショップ担当者フォーラム、2026年7月29日)に登壇し、顧客目線に立ち返って課題を可視化する「プロミスブレイク」の把握手法や、具体的な改善施策を明かした。
「私たちは、さらなる事業成長を目指してCX(Customer Experience:顧客体験)向上に力を入れている。その起点は顧客目線に立ち返り、不便な点を改善していく活動にある」--。カウネット CXデザイン本部 本部長 上山 哲史 氏はこう話す(写真1)。
コクヨグループのカウネットは、購買管理システムの提供やオフィス消耗品を中心にEC(電子商取引)サービスを提供している。2000年の創業以来、売上高は右肩上がりの成長を続け、2025年度は928億円に達した。「1000億円の到達がようやく見えてきた」と上山氏は意気込む。
現在、カウネットは中小企業向けオフィス用品通販を主力事業に据えながら、大企業向けには間接材一括購買管理サービス「べんりねっと」を、個人向けには通販サービス「カウモール」を展開し、BtoB(企業間)/BtoC(企業対個人)の両面から顧客基盤を広げている。
顧客目線のCX定義を社内に共有
カウネットの事業は元々、FAX受注と電話対応を軸とするカタログ通販から始まった。その後、事業をECへと発展させ、注文方法をカタログからWebへと広げた。商品の配送は各地の配送パートナーが担い、電話に加えてWeb経由の受付を実現してきた。一方で、機能を段階的に追加する過程では「顧客体験を確認し、サービス全体を見直す機会を十分に持てていなかった」と上山氏は振り返る。
CX向上に向けた取り組みに先立ち「カウネットにとってのCX」を定義することから着手した。なぜなら“CX”には世の中で共通する明確な定義がなく、種々の解釈があるためだ。上山氏は、CXを「顧客が一連の体験を通じて感じる価値」と定義し「『CXを高め、顧客に貢献することがビジネスの目的だ」という考え方を社内に伝えた」と説明する。
とはいえ、CXの概念そのものを理解するのは容易ではない。社内への浸透を図るため、上山氏はコンタクトセンターでのエピソードを用いて、次のように説明する。
「ある顧客が在庫切れ商品の入荷予定を問い合わせた際、オペレーターは『1週間後に入荷予定』と回答した。しかし、顧客がその納期では間に合わず、困っていることが分かると、オペレーターは競合他社の在庫状況まで調べ『そちらであれば在庫がある」と案内した」
この対応は、カウネットにとって直近の売り上げには結び付かない。だが「顧客にとって何が最善なのかを考えることは、信頼獲得という形で将来の売り上げに還元される。こうした考え方でCXを根付かせようとした」と上山氏は強調する。
年間32万件の顧客の声からプロミスブレイクを発見
カウネットが考えるCXの改善サイクルは3つのステップからなる。
ステップ1 :VoC(Voice of Customer:顧客の声)などの情報を収集し課題を可視化する
ステップ2 :可視化した課題から改善すべきポイントを検討する
ステップ3 :改善活動を実行し、顧客からのフィードバックを基に効果を確認する
このサイクルの起点となる情報収集で上山氏が重視するのが、顧客の信頼を損なう原因となるトラブルや不具合を指す「プロミスブレイク」の把握である。
同社のコンタクトセンターには、年間約32万件の問い合わせが寄せられる。従来、その振り分けはスタッフが担当し「中でも顧客からの『ごもっとも』な指摘内容にフラグを付けて集約していた」と上山氏は説明する。「ごもっとも」に該当する声は問い合わせ全体の約1%にとどまるものの「毎年約3000件の声が蓄積されており、改善に活用できると考えた」(同)
しかし、残る99%にも間違いなく多くの改善のヒントが含まれている。そこで問い合わせ全件の内容をテキストデータ化し、VoC分析基盤「Flyle」(フライル製)を導入。分析・可視化する体制に切り替えた。
検討項目ごとにダッシュボードを作成して課題を深掘りするほか、同じ顧客を時系列で追跡し、状況変化の兆候を捉える。施策の効果は該当指標を実施前後で比較しことで「プロミスブレイクの発見から改善までを有効にした」(上山氏)とする。
