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第一三共、エージェンティックAIを創薬研究の戦力へ実験の自動化基盤を構築
「AWS Summit Japan 2026」より、研究開発本部 研究統括部 スマートリサーチ第一研究所長の岡本 敦之 氏
研究のコンテキストを理解しないAI技術には頼れない
こうした基盤整備に至るまで、エージェンティックAIの必要性を岡本氏のチームが強烈に実感したのが、開発フレームワーク「AI-DLC(AI-Driven Development Lifecycle:AI駆動開発ライフサイクル)」を体験したイベントでの出来事だった。
当初、AI技術は研究業務の複雑な意図やりたいことをなかなか理解しなかった。だがすでに実施していた(1)の柱として「イベントストーミングの付せん画像などを共通言語として読み込ませると、AI技術は業務フローを深く理解し、互いに理解し合いながら作業が進めむようになった」(岡本氏)という。
この体験から岡本氏は「AIエージェントは、自分たちのコンテキスト(文脈)を正しく理解してはじめて頼れる存在になる」との確信を得る。「逆に現場のコンテキストが共有されていなければAI技術の負担となって、かえって研究の足を引っ張りかねない」(同)
折しもパートナーであるAWSも、自分たちのコンテキストをエージェントに理解させる「セマンティックレイヤー」の重要性を発信し始めていた。その動きに触れて「コンテキストを読み込ませるための必要性を感じ、その仕組みをどう構築するかを考えるきっかけになった」(岡本氏)という。
研究の仮説検証サイクルをAI技術に教え込む
では、AIエージェントには具体的に何を教えればよいのか。岡本氏は、創薬研究の本質に立ち返る。創薬研究の基本は、仮説検証のサイクルにあり、これを「DMTA(Design:設計、Make:合成、Test:検証、Analyze:解析)」と呼ぶ。
そこではある物質が「薬になりそうか」を検証するために、化合物の性質を調べる。岡本氏は「どの評価系で評価し、どんなデータが得られ、その分析の結果は仮説を裏付けたのか。そして次に検証すべき仮説は何か。この一連のコンテキストをAI技術に理解させることが何よりの要になる」と説明する。
手がかりは、すでに第一三共が積み上げてきたドメインモデルとスマートラボで生まれる実験データという2つの資産にあった。この方向性を体現する取り組みこそ、第一三共が目指す「Semantic Hub」構想である(図4)。
研究プロセスをドメインモデリングすると、定義されたモデルがプログラムコードと一体化し、そのままAI技術が読めるデータ構造になる。これを蓄積すれば、AI技術は創薬研究プロセスそのものを理解していく。さらに岡本氏は「研究プロセスは互いに似通ったパターンが多いため、一度モデルを理解したAIエージェントは次のモデリングを加速できる」と期待を寄せる。
仮説検証のサイクルごとに生まれる「データ」「意図」「判断」を業務フローと密接に紐付けて蓄積する。同社は現在「このセマンティックレイヤーの構築に着手した段階にある」(岡本氏)
講演の最後に岡本氏は、「AIエージェントがコンテキストを正しく理解すれば、強力な仲間として研究を支えてくれる。これが数年後かに実際に動き出し、研究を加速している姿を、また皆さんに共有できればうれしい」と締めくくる。
