• UseCase
  • 製造

帝人グループ、全社AI活用に向けIT組織の一体化からシステムとデータの統合に着手

「AI資本経営フォーラム2026 in Autumn」より、グループ執行役員 CDOの舩生 幸宏 氏

山田 光利
2026年10月21日

マテリアル、繊維製品、ヘルスケアなどの事業をグローバルに展開する帝人グループは、全社AI(人工知能)活用に取り組む中で、事業や地域で異なる業務プロセスやシステムに直面した。同社グループ執行役員 CDO(最高デジタル責任者)デジタル・情報システム管掌の舩生 幸宏 氏が『AI資本経営フォーラム2026 in Autumn』(主催:ストックマーク株式会社、2026年9月17日)に登壇し、全社の生産性向上に向けてIT組織の一体化を起点に、システムとデータの統合と、個別業務へのAI適用を並行して進める取り組みを紹介した。

 「企業のシステムはどんどん増えている。しかしそれを片付ける人がいない」--。帝人 グループ執行役員CDO(最高デジタル責任者)デジタル・情報システム管掌の舩生 幸宏 氏は、社内に増え続けるシステムを”散らかったおもちゃ”に例えて、こう話す。

帝人 グループ執行役員CDO(最高デジタル責任者)デジタル・情報システム管掌の舩生 幸宏 氏

事業ごとに異なる業務とシステムがAI活用の壁に

 日本の製造業では、事業部や地域ごとに業務プロセスとシステムが異なる例が多い。舩生氏によれば「社員が複雑な業務手順やシステムを使いこなしている現場では、その負担が表に出にくい」という。

 企業が海外進出やM&A(企業の買収・統合)を図る過程でも、各拠点が「現地調達でそれぞれの仕組みを導入してきた結果、データが分散した」(舩生氏)背景がある。本社で全社の状況を把握するには、各事業から集めた情報を人手で整理・集計する必要が生じている。

 対照的なのが海外企業だ。舩生氏は「海外企業は日本企業に比べ、業務プロセスやシステムを全社で標準化する傾向が強い」と指摘する。結果として、“AI-Ready”な環境が出来上がりやすい。

 ただし、生成AI(人工知能)技術を個々の業務で使うだけでは、全社の生産性向上につながらない。分散したデータを利用できる状態にするために、舩生氏は「データそのものに加え、システムの統合と業務プロセスの標準化にも踏み込む必要がある」と強調する。

「顧客と価値を生む事業」へと転換する

 帝人グループがDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める背景には、事業モデルの転換がある。素材を高い品質で提供するだけでは「価格競争や複雑化する顧客の課題に対応し切れなくなっている」(舩生氏)からだ。そこで製品の販売を中心とする事業から「製品とサービスを組み合わせ、顧客と共に価値を生み出す事業への転換を図っている」(同)とする。

 具体例としては、繊維製品事業とヘルスケア事業がある。繊維製品事業では複数の素材を組み合わせた提案を進める。一方のヘルスケア事業では「睡眠時無呼吸症候群向けに、製品とサービスを組み合わせて提供している」と舩生氏は説明する。一方「素材そのものを提供する事業は競争が厳しく、事業構造の見直しを進めている」(同)状況だ。

 同社グループには、長年にわたり多様な顧客や取引先と築いてきた関係がある。ただ、顧客との調整や取引先とのやり取りには、人の経験と手作業に依存する部分がどうしても残る。舩生氏は「そこで培われた知見をデータとして蓄積し、AI技術で活用可能な形にすることが、事業を広げる上で重要だ」と強調する。