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  • 世界経済フォーラム(WEF)発、グローバルに見るデジタルを前提にした未来地図

2度のエネルギー危機が示す戦略転換と日本への期待【第2回】

本田 希里子(世界経済フォーラム ビジネス・エンゲージメント統括(日本))
2026年8月3日

地政学的リスクの影響はエネルギー市場にも及んでいる。加えて近年はAI(人工知能)技術の発展・普及によるデータセンターの電力消費量の増大が大きな課題として浮上している。世界経済フォーラムは毎年、エネルギー政策の動きを示す「Energy Transition Index(ETI:エネルギー転換指数)」を発表している。最新のETI2026からエネルギー戦略の動向と、日本の役割を考察する。

 2022年、例年1月にスイス・ダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響により5月に開催された。その直前の2月にはロシアによるウクライナ侵攻が始まり、同総会では「歴史的転換点における政策とビジネスの戦略」が主要テーマになった。

 議論の中心には地政学的リスクが据えられたが、その影響はエネルギー市場にも及び、世界経済の前提そのものを揺るがした。それまでエネルギー転換は、主として「脱炭素」の観点から議論されてきた。しかし2022年以降、エネルギー政策は「脱炭素化」だけでは成立しないことが明らかになった。

 さらに2026年には、ホルムズ海峡の封鎖により、中東からアジアへ向かう原油・LNG輸送という世界のエネルギー供給網の重要なボトルネックが顕在化した。中東への依存度が高いアジア諸国への影響は大きかった。だが、価格上昇やサプライチェーンへの影響は欧州や北米にも及び、この危機は地域的な問題ではなく、世界経済全体のレジリエンスに関わる課題であることを改めて浮き彫りにした。

 これら2度の危機は、エネルギー転換の方向性そのものを変えたのではない。変わったのは「どのように転換を進めるか」という前提である。

エネルギー転換指数2026が示す「エネルギーシステム」の危機

 世界経済フォーラムが2026年6月に公表した『Energy Transition Index(ETI:エネルギー転換指標)2026』は、各国のエネルギー転換を「持続可能性(Sustainability)」「公平性(Equity)」「安全保障(Security)」というエネルギー・トリレンマの3つの観点と、それを支える「転換準備態勢(Transition Readiness)」から評価している(図1)。日本は前年から順位を1つ上げ24位になっている。

図1:世界経済フォーラムの「Energy Transition Index(ETI:エネルギー転換指標)」の評価軸

 世界全体ではエネルギー投資は過去最高水準に達し、2025年には約3.3兆ドル、そのうち約2.3兆ドルがクリーンエネルギーへ投資された。一方で、これら3つの目標を同時に改善できた国は全体の約4分の1にとどまる。

 指数が示す重要なメッセージは、世界のエネルギー転換が1つのモデルへ収斂するのではなく、各国が自国の資源や、産業構造、安全保障環境に応じた異なる移行経路を選択する時代に入ったということである。再生可能エネルギーと電化を加速させる国がある一方で、エネルギー安全保障を重視し、既存エネルギーとの現実的なバランスを追求する国もある。

 同じ時期に中国・大連で開催された世界経済フォーラムの「ニュー・チャンピオン年次総会」(通称サマーダボス)では、「イノベーションの波及と深化」をテーマにAI(人工知能)技術の社会実装が大きく議論された(図2)。

図2:中国・大連で開催された「ニュー・チャンピオン年次総会」におけるセッションの様子