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ブロックチェーンが進化しWeb3の分散型世界が到来【第101回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2026年2月16日

進化3:データの相互運用性の向上

 ブロックチェーンの課題に、外部データや他のブロックチェーンとの相互運用性があった。外部データの使用については「ブロックチェーンオラクル」という方法で、ブロックチェーンに外部データを提供可能になった。外部の株価や為替レートなどの価格情報、在庫状況、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)による環境情報、交通情報などをブロックチェーンに取り込める。

 異なるブロックチェーン間の相互運用も「クロスチェーンメッセージ」という仕組みにより、データや資産の安全な移動が可能になり、ブロックチェーンをシームレスにつないだシステムを構築できるようになっている。

 主要なクロスチェーンプロトコルには「IBC」「Chainlink CCIP」「LayerZero」「Axelar」「Wormhole」などがある。それぞれ異なるセキュリティモデルと用途に最適化されている。中央集権的な金融機関を介さずユーザー同士が直接金融取引できる仕組みの「DeFi(Decentralized Finance)」やNFT、企業向け決済などで実運用が進んでいる。

進化4:スマートコントラクトの進化と適用分野の拡大

 ブロックチェーン上で稼働するスマートコントラクトは、プログラムコードで記述されたデジタル契約としてブロックチェーン上に保管される。その契約に設定された条件を満たすと、認証・検証され設定した内容を自動的に実行する。ブロックチェーンを使っているため、改ざんや不正が防げ、仲介者なく効率的な契約履行が実行できる。

 ブロックチェーンオラクルやクロスチェーンメッセージによって、外部や他のブロックチェーンのデータをスマートコントラクトに提供できるようになり、外部情報に基づいて自動実行できるスマートコントラクトの幅広い業種への適用が可能になった。

AI技術の組み合わせでブロックチェーンの使い勝手が向上

 これらのブロックチェーンの進化により適用分野は増えている。金融では、既存の不動産、債券、商品など現実資産をブロックチェーン上でトークン化し管理・取引可能にする取り組みが加速している。

 例えば米ブラックロックは2024年3月から、MMF(Money Market Fund)をトークン化しブロックチェーン上で発行し機関投資家へ提供している。英HSBCは、現実の金の所有情報をブロックチェーンで記録する「ゴールドトークン」のサービスを始めている。

 暗号資産のインフラとしてもブロックチェーンの活用は広がっている。『動き出すステーブルコイン、デジタル通貨が起こす変革とは【第97回】』」で述べたように、価格変動を最小限に抑えたステーブルコインは、決済手段や価値の保存手段として広く使われ始めている。DeFiとしての利用も広がりつつある。

 ほかにもゲームやエンタメでは「Play-to-Earn」呼ぶゲームのプレイや、NFTを使ったデジタル資産の獲得や売却が行われている。企業や地域でもサプライチェーンの決済、海外送金、デジタル商品券や、NFTによる会員証、チケット、ファンコミュニティなどの活用事例がある。

 分散型のID管理にも使われている。ブロックチェーンを使いIDの存在、公開鍵などを改ざん不可能な形で記録する「DID(分散型ID)」である。DIDによって資格情報を管理し、必要に応じて必要な項目だけを提示できる仕組みの実現もできる。

 さらに、AI(人工知能)技術による進化が起こってもいる。オフチェーンのAIサーバーや分散AI、またブロックチェーンオラクルによるAI機能を使ったスマートコントラクトの自動化、意思決定支援、データ解析などの強化を可能にしている。

 そこでのブロックチェーンは、ウォレットによるアセットの管理やスマートコントラクトによる行動ルールの定義を担う。これにより、自律的な資金運用や自動的なサービス売買などを、AIエージェントやAI同士がスマートコントラクトを使って取引できるようになる。

 AI技術はさらに、コード生成や、自然言語によるUX(User Experience:顧客体験)の改善、監査・ガバナンスの支援などWeb3の課題を補完し、より便利で使いやすくする。

規制・制度の整備も進み社会は分散型に

 Web3の広がりには、規制・制度の整備も貢献している。世界各国、特に米国・EU(欧州連合)・日本での税制、ステーブルコインや金融商品化のルールの整備は、企業が安心して製品/サービスを提供できるようにしている。

 プラットフォームとしてのブロックチェーンは、大規模なソフトウェアや、それを稼働する大規模なコンピューターを必要とせず、セキュリティや透明性、非改ざん性を提供し、必要な仕組みを簡単に実現できる実装コストの面で優れている。分散型の課題である高速化やスケーラビリティも改善している。

 Web3をプラットフォームにすれば、トークンやNFTをクラウドなどで集中管理するのではなく、ユーザーがウォレットで所有する形になる。ユーザーはブロックチェーン上の動作を可視化してチェックできる。ガバナンスは、DAO(Decentralized Autonomous Organization)の決定にコミュニティ投票が使われるなど、意思決定を、大手サービス提供者などが最終決定をする中央集権型から分散型に変化させられる。

 中央集権型から分散型へのプラットフォームの変化は、社会の仕組みや企業の変革につながっていく。

大和敏彦(やまと・としひこ)

 ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。

 その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。