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ブロックチェーンが進化しWeb3の分散型世界が到来【第101回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2026年2月16日

「Bitcoin」のインフラとして生まれた分散型ブロックチェーンは「Web3」という分散化のインフラとして重要性を増している。Web3の動きは今や、投機やバズワードではなく、より現実的な技術やプラットフォームへとして進化し、利用者が意識せずに使う社会基盤として溶け込みつつある。今回はWeb3技術の現状と今後を考えてみたい。

 「Web3」は、参加者のIDやデータの所有権が特定の提供者に依存しない水平的なインターネットを目指す概念である。ブロックチェーン技術を活用することで、巨大企業による情報や利益の独占ではなく、利用者自身のデータや資産を管理できる世界を実現する。

 現在のユーザー参加型・双方向のインターネットの仕組みや概念を示す「Web2」では、GAFAM(Google、Amazon.com、Facebook(現META)、Apple、Microsoft)に代表されるプラットフォーマーによる利便性の高いサービスにより、利用者のデータが特定の事業者に集中し、データに関する権限やサービス内容の決定の権限が偏っている。

ブロックチェーンが進化し社会基盤として機能し始めている

 Web3について筆者は2023年3月に公開した『NFTやWeb3などブロックチェーンをインフラにDXが進む【第66回】』において「分散化のインフラとして、その重要性を増していく」と指摘した。ただその後、仮想通貨バブルや、有名人や有名なコレクションにおけるNFT(Non-Fungible Token)投機バブルなど“稼ぐこと”が主体の投機色が強まり、Web3の発展は目立たなかった。

 それが今、先に指摘したように、利用者が意識せずに使えるプラットフォームとして社会に溶け込み始めている。Web3を支えるブロックチェーンは、さまざまなユースケースに対応できるインフラとして進化してきたからだ。

進化1:高速化

 ブロックチェーンには(1)企業など特定の組織内で使われるプライベートブロックチェーン、(2)業界団体などのグループで運用されるコンソーシアムブロックチェーン、(3)承認を受けた特定の個人によるブロックチェーン、(4)誰もが利用できるパブリックブロックチェーンがある。

 金融などでは、機密性が高く非公開のネットワークであるプライベートが利用されてきた。だが、トークンエコノミーの拡大に伴い、金融機関やフィンテック企業でもパブリックを活用する事例が増えてきている。パブリックは非中央集権性が強く、多くのユーザーやユースケースに対応できる。

 ブロックチェーンの仕組みでは、書き込みに関して、信頼できないコンピューターからの不正を防止する仕組みがある。その仕組みを「合意形成」と呼ぶ。誰もが使えるパブリックでは合意形成に時間がかかり、1秒当たりに処理できるトランザクション数に制限ができるが、その高速化が進んでいる。

 ブロックチェーン本体(レイヤー1)の外側(オフチェーン)にあるレイヤー2でトランザクションをまとめて処理し、最終結果だけをブロックチェーン本体に書き込むことで、大量のトランザクションの処理時間の短縮と大量データ処理を可能にする。

 データ可用性レイヤー(Data Availability Layer)は、ブロックの検証に必要なデータが、ネットワーク全参加者に利用可能であるというデータ可用性を保証する。計算した結果を証明値(Proof)という形に変えることで、その後の検算を不要にする。内容を公開せず正しい取引であることを証明でき、大量の取引をまとめて処理することで、処理時間を削減できる。

 処理の高速化は、用途や目的ごとに独自のブロックチェーンを構築することによっても実現できる。

進化2:秘匿性の向上

 データの開示に関する新しい技術が生まれている。「ゼロ知識証明(ZKP:Zero Knowledge Proof)」である。その情報を相手に開示することなく計算の正しさを証明でき、匿名送金やIDのプライバシー保護などに使える。ZKPを使った「ZK Rollup」という方法をレイヤー2で使えば、大量のトランザクション処理の結果を保証し、データの秘匿性の実現やデータサイズの縮小、計算の削減を図れる。

 ZKPでは、複数取引の精算において、それぞれの清算金額や取引相手を明らかにすることなく、その精算の収支演算が正しく実行されたことが証明できる。それにより処理スピードの向上、大量の繰り返し演算の削減、さらに秘匿性の向上が図られ大規模でも使えるインフラになっている。