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AIが加速するクラウドの高機能化と知能化【第100回】

生成AI(Artificial Intelligence:人工知能)/AI技術の進歩と、その普及によって、それらの動作環境となるクラウドの必要性が、さらに高まっている。AI対応のデータセンターへの投資を含め、クラウド市場は増大する一方だ。今回は、AI技術の浸透に伴うクラウド市場の変化を見てみたい。
生成AI(Artificial Intelligence:人工知能)の普及により、クラウドの必要性がますます高まっている。2025年第3四半期のIaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS (Platform as a Service)、ホスト型プライベートクラウドサービスを合わせたクラウドインフラサービスの市場は1069億ドルに達した。その中でIaaSとPaaSの市場は前年比で30%伸びている(米Synergy Research Group調べ)。AI利用に伴い次のような成長要因がプラスされている。
AI利用に必要なコンピューティングリソースの増加
AIモデルの学習や推論にはGPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)が必要になる。そこには「スケーリング(Scaling)則」があり、性能を上げるためには、より大量のリソースが求められる。クラウドベンダーは、これらのリソースをクラウドでGPUサービスやAIサービスの形で提供する。
データ活用の増大
AIモデルの学習には、データの蓄積や分析が不可欠であり、大量のストレージを使うためにクラウドが必要になる。
AI活用分野の増加
AI技術の活用分野が広がり、さまざまな用途で活用されている。金融や医療、製造など業界特化型のAIサービスでは、AI技術だけでなく、そのためのアプリケーションも必要になる。それらがクラウドを使ってサービスとして提供される。
生成AIブームによりクラウドへの投資と競争が加速
生成AIブームにより各社の競争は加速しており、そのため巨額投資が市場を活性化している。そこでは米Amazon.comの「AWS(Amazon Web Services)」、米Googleの「GCP(Google Cloud Platform)」、米Microsoftの「Microsoft Azure 」3大クラウドによる寡占が進んでいる。それぞれの2025年第3四半期の市場シェアは29%、20%、13%で、3社合計で62%を占めている(米Synergy Research Group調べ)。
ただ、ここにもAIの影響が表れており、AIで先行するMicrosoftとGoogleは強みを生かしてシェアを上げ、AWSはシェアを落としつつある。3大クラウドプロバイダーのAI戦略を見てみたい。
AWS(Amazon Web Services)
AWSは、AIチャットボットからAIエージェントへの移行を掲げ、エンタープライズ向けAI基盤を、さまざまなクラウドサービスを統合することによって実現しようとしている。既に150以上のサービス(2025年12月時点)を提供しており、安定した運用実績を誇る。
AIに関しては、各種サービスを幅広く揃え、セキュリティやコンプライアンスを重視して提供する。具体的には、AIエージェントの「Amazon Bedrock」や業務向けAIアシスタントの「Amazon Q」などがある。Bedrockには、ツールの実行と計画、メモリー、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)などが統合されている。
AIエージェントのためのプラットフォームとなる「Amazon Bedrock AgentCore」やエージェント開発ツール「Kiro」も用意する。Bedrock AgentCoreは、AIエージェントのメモリー管理や実行環境、ツールとのゲートウェイ、ID管理や監視の機能を提供。Kiroは、外部ツールやAPI(Application Programming Interface)と連携するため標準プロトコル「MCP(Model Context Protocol)」に準拠したAIエージェントを自動的に高速開発する。
GCP(Google Cloud Platform)
GCPは「2025年はエンタープライズ領域におけるAIエージェント元年」と宣言している。先端AI技術を強みに、それらを使ったデータや機械学習を統合した一体運用、検索エンジン、「YouTube」や「Google Map」などをAI技術で強化して提供している。AIモデル「Gemini」を中心に、企業のデータ活用やマルチモーダル対応を進める。
Microsoft Azure
Microsoftは、「Office 365」や「Teams」「Dynamics 365」「Windows」「Active Directory」などの自社製品にAI技術を統合し、Copilotによる支援からAIエージェントによる自動化で、業務効率や生産性の向上を図ろうとしている。