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6Gを視野に足踏み続く5Gの現状とこれから【第102回】
観点3:5GによるDX
パブリック5Gを使ったDXを加速するには、パブリック5Gの高品質化を図る必要がある。それによりローカル5Gの活用をパブリック5Gで代替できDXの範囲を広げられる。
ローカル5Gの使い方は現在、Wi-Fiの代替、ロボットとAI(人工知能)、監視カメラなど、点と点をつなぐ使い方による部分最適にとどまっている。5Gネットワークでは、移動中でもデータを収集したり、指示を送ったりが可能になる。場所や地域を越えたデータ統合やAI化、さらに企業や業種をまたいだDXによる全体最適を図る必要がある。
そのためには、情報を自社の強みとして囲い込むと同時に、サイバー攻撃を恐れるあまりネットワーク接続をクローズにする文化を変える必要がある、セキュアな体制を構築し、その上で必要な情報をオープンに共有することで、生産性や効率の高い社会を作る。ネットワークを活用してオープンな社会をつくる思考に変えなければならない。変革を推進することで新事業も生まれ、インフラへの投資も進む。
中国では、その構想の実現に進んでいる。中国全土に5Gネットワークが広げられ、それを活用した産業の活性化も盛んだ。代表的な分野が「中国製造2025」と呼ばれる製造への展開である。製造業への応用をIIoT(Industrial Internet of things)と呼び、それを「ヒト、機械、モノ、システムなどの包括的な接続によって、全産業チェーンと全バリューチェーンをカバーする新たな製造/サービスシステム」と定義している。
その適用は、個別のネットワーク化にとどまらず、全産業チェーンや全バリューチェーンをネットワークにより強化することを目指している。すなわち設計や評価、部材の調達などの川上から、販売、保守などの川下までをネットワーク化し、データを蓄積し改善していく仕組みの実現を図る。
IIoTの成果は、世界経済フォーラムが2018年に始めた「ライトハウス」と呼ばれる工場の数に表れている。ライトハウスは、先端技術を積極的に活用し、生産性の向上や品質の改善、コスト削減、環境負荷の低減などを実現している工場だ。
2025年度に選出された世界で189か所のライトハウス工場のなかで、中国は72カ所を占める。そのうち、川上から川下までのサプライチェーンを一元管理しているものが27カ所に上る。
中国はIIoTのように、コミュニケーションや既存の仕組みの改善だけでなく、ネットワークによって、さまざまなものをつなぎ、それによってデータを収集・分析・指示できる体制を実現している。その動きは、スマートシティや自動運転車、産業の自動化など新しいシステムや仕組みつくりなどの変革に生かされている。
ネットワークの発展には5Gを社会インフラにする必要が
5Gや、さらに進化した6Gは、さらなる高速・大容量化や低遅延、多数同時接続といった通信の高度化を図ろうとしている。そうしたネットワークの発展には、現在の5Gを世の中を変えていく社会インフラとして進化させていく必要がある。
スマホやXR端末のような端末中心から、DXインフラとして広く活用を増やしていくことは、5Gネットワークの投資効率を高めることにつながり、ネットワーク品質の改善によって変革を加速し使い方を増加させることで、適正な価格の実現にもつながる。
今後、AI技術の発展に伴い、さまざまなデータが必要になり、その収集にネットワークが必要になる。AI活用がさらに増えれば、データの収集やAIへの問い合わせ、AIによる制御などネットワーク接続は、さらに広がる。自動運転車やロボットなどのコネクティッド機器の活用が企業や生活に広がり、それらを監視・管理し制御するためにもネットワークが必要になる。
ネットワークや、その上のアプリケーションは今後、その重要性がますます高まっていく。ネットワークインフラ上にDXとしてシステムを作り上げられる体制の構築・整備も重要になる。ネットワークをベースとしたDXの発想が必要であり、それらを検証できるよう、最新のネットワーク環境を、できるだけ早く使えなければならない。ネットワークのトライアルを早急に準備し、上位レイヤーのアプリケーションやサービスの開発を進める必要がある。
大和敏彦(やまと・としひこ)
ITi(アイティアイ)代表取締役。慶應義塾大学工学部管理工学科卒後、日本NCRではメインフレームのオペレーティングシステム開発を、日本IBMではPCとノートPC「Thinkpad」の開発および戦略コンサルタントをそれぞれ担当。シスコシステムズ入社後は、CTOとしてエンジニアリング組織を立ち上げ、日本でのインターネットビデオやIP電話、新幹線等の列車内インターネットの立ち上げを牽引し、日本の代表的な企業とのアライアンスおよび共同開発を推進した。
その後、ブロードバンドタワー社長として、データセンタービジネスを、ZTEジャパン副社長としてモバイルビジネスを経験。2013年4月から現職。大手製造業に対し事業戦略や新規事業戦略策定に関するコンサルティングを、ベンチャー企業や外国企業に対してはビジネス展開支援を提供している。日本ネットワークセキュリティ協会副会長、VoIP推進協議会会長代理、総務省や経済産業省の各種委員会委員、ASPIC常務理事を歴任。現在、日本クラウドセキュリティアライアンス副会長。