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6Gを視野に足踏み続く5Gの現状とこれから【第102回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2026年3月23日

3G(第3世代移動通信システム)のサービスが終了する一方で、衛星ダイレクト通信が始まるなどモバイルネットワークが大きく変化している。その中で5G(第5世代移動通信システム)のパブリックネットワークの実態は、速度は4G(第4世代移動通信システム)とそれほど変わらず、接続可能なエリアも限られている。今回は5Gの現状や6G(第6世代移動通信システム)への進化を考えてみたい。。

 5G(第5世代移動通信システム)は、より高速な通信を可能にし、さまざまな活用が広がると期待されてきた。だが、速度も接続可能なエリアも限定的だ。ユースケースとしても、例えばXR(Extended Reality)による没入体験も、端末が高価だったり、連続使用時に疲れるなど技術が未成熟だったり、コンテンツ不足だったりと、それほど広がっていない。実際に有効な活用例は高精細画像の高速ダウンロードぐらいである。

 5Gの現状と今後を(1)接続性、(2)5Gアプリケーション、(3)5GによるDX(デジタルトランスフォーメーション)の観点からみてみたい。

観点1:接続性

 総務省の発表によると、2025年3月末の5G人口カバー率は98.4%である。5G基地局数も、KDDIが11万37局、ソフトバンクが10万4441局、NTTドコモは5万2532局、楽天モバイルが3万5108局となっている。各社とも、さらなる増強計画を進めている。5G本来の機能を提供できる5G SA(Stand Alone)機能が使える基地局も2024年度から約5.1万局増加し、15万5721局になっている。

 このように進歩はしているが、高速、低遅延、どこでもつながるという5Gへの期待を実現できているとはいいがたい。5Gの普及に向けては何が足りないのか。

 上述したように、5G基地局は各社が10万局超を設置しているが、SAは、その約半分であり、本来の5G機能を満足に提供できる体制はできていない。また、高速性を実現するには、非常に周波数の高いミリ波通信が必要だが、その電波は直進性が強く電波が回り込みにくい。そのため、壁や建物などの障害物を通せず、多くのミリ波基地局がなければ高速性の実現は難しい。

 一方、5Gの活用が進んでいる中国では、5G基地局数は2025年10月末時点で475万8000か所に達している(中国 工業・情報部調べ)。5Gの「キャリアアグレゲーション」と呼ぶ技術を使って、安定した速度や接続性を実現することで、多くのデバイスやモノが接続され、活用例が増えている。キャリアアグレゲーションは、ミリ波通信と、電波が遠くまで届きやすく障害物の影響を受けにくい「Sub6」と呼ぶ6ギガヘルツ以下の電波を重ねて1つの通信回線として使う技術である。

 6Gになると、さらに高速の周波数を使うために、膨大な数の基地局が必要になる。この基地局への投資のためにも、5Gを社会ネットワークとして浸透させ、その活用による収入を増やす必要がある。

 モバイル通信の接続性に関しては、地上の基地局以外にも『SpaceXがリードする衛星インターネットの“これから”【第62回】』で触れた衛星通信がある。衛星と地上の携帯電話がダイレクトに通信できる。すでにKDDIがサービスを開始し、他のキャリアも2026年中の開始を発表している。

 衛星通信は天候に左右されるものの、基地局の整備が困難な山間部や離島、海上でもデータ通信が可能になる。ただ現在の衛星ダイレクト通信は、4GのLTE(Long Term Evolution)をベースにしたものが多く、5Gの機能は実現されていない。

 ネットワーク環境自体は進化しており、どこでも接続可能な環境を実現しやすくなっている。5GのSub6電波やミリ波によるネットワークと、衛星ダイレクト通信によるネットワークは、いずれも接続性、高速性、低遅延などの特徴を持ちモバイルのネットワーク環境を増強する。これらの特徴を生かしたネットワークの活用が必要になる。

観点2:5Gアプリケーション

 5Gの機能を生かしたデバイスやアプリケーションが求められている。5Gのアプリケーションで進んでいるのがローカル5Gの世界だ。ローカル5Gは、製造業でのロボットや自動搬送ロボットの制御、遠隔監視・遠隔制御、交通・物流の映像による運行監視、エネルギーインフラの監視など、高い通信品質や専有性が必要とされる分野での活用が進んでいる。2028年の市場規模は573億円と予想されている(デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ)。

 ローカル5Gでは、さまざまなものがネットワークに接続される動きが進んでいるのに対し、パブリック5Gでは、その対象はスマートフォンなどの端末が中心であり、かつ5G本来の機能を生かすアプリケーションはXRなどに限られている。5Gのネットワーク品質の高まりによる5Gアプリケーションの開発が期待される。

 パブリック5Gの世界でも、より高品質のネットワークを提供できれば、屋内で使っているデバイスやアプリケーションがどこでも使えるようになる。さらに、さまざまな場所のセンサーや画像監視などのデータ収集や、ロボットや自動運転車の状況監視や制御にも活用できる。それによって5Gの機能を生かしたデバイスも生まれ、キャリアの収入機会も増える。

 プライベート5Gという仮想ネットワークを使えれば、現在ローカル5Gでしか実現できない専有性や通信品質を実現できる可能性がある。