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- 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法
データ分析における心理的側面の深いつながり【第13回】
心理的ポイント3:フレーミング効果
データ分析で分かったことに、心理的な効果を加えると影響は大きい。ある疾病の手術の成功確率を示す場合、「25人に1人が失敗」というのと「96%が助かる」というのではイメージは全く違う。これがフレーミング効果である(図3)。
心理的にフレーム、つまり“構成”を作るという意味で、言い方によって相手の思考を自分の都合の良いように“構成”する。データ分析の結果のメッセージを作る場合には有効である。
心理的ポイント4:アンカリング効果
アンカーは船の錨(いかり)のことである。最初に提示された条件や印象などが錨のように縛り続けることをアンカリング効果という。たとえば、値段交渉では最初に言われた値段が錨になり、そこからどれだけ値引きされたかに興味を奪われてしまう。問題なのは、価値に見合った価格かどうかを見失っていることだ。データ分析でも最初に得られた結果にこだわり続けると方向性を見失う。
心理的ポイント5:プライミング効果
良いイメージの名前は人のイメージを活性化させるというのがプライミング効果である。たとえば、データ分析の結果をグラフにし可視化する場合、タイトルやグラフに添える(グラフの特徴を表す)メッセージの表現がとても大切になる。タイトルの付け方だけで相手への印象が変わるからだ。
商品も名称を変えるだけで、変更前後で売り上げが数十倍も違った事例が報告されている。その商品が食べ物ならば、商品名の持つイメージだけで消費者が感じる味覚にも影響するようだ。
他にも、ツアイガルニック効果、スノッブ効果、バンドワゴン効果、ハロー効果、ウインザー効果なども知っておいたほうがいい(図4)。
画一化・標準化された方法ではデータ分析は難しい
ここまで心理的な側面がデータ分析に与える影響を見てきた。単純な因果関係のみでは相手に訴求できない場合、心理的な効果は非常に有効だ。
データ分析に限らないが、後継者を育成する場合は、相手を褒めることも大切な心理的要素である。子育てでも、褒められるとへこたれない強い子供になるというデータが、国立青少年教育振興機構の調査に出ている。
単なる画一化・標準化された方法ではデータ分析は難しく、統計学以外の要素も考慮しなければならない。心理学もその1つである。
次回はデータ分析をリスクの視点から解説する。
入江 宏志(いりえ・ひろし)
DACコンサルティング 代表、コンサルタント。データ分析から、クラウド、ビッグデータ、オープンデータ、GRC、次世代情報システムやデータセンター、人工知能など幅広い領域を対象に、新ビジネスモデル、アプリケーション、ITインフラ、データの4つの観点からコンサルティング活動に携わる。34年間のIT業界の経験として、第4世代言語の開発者を経て、IBM、Oracle、Dimension Data、Protivitiで首尾一貫して最新技術エリアを担当。2017年にデータ分析やコンサルテーションを手がけるDAC(Data, Analytics and Competitive Intelligence)コンサルティングを立ち上げた。
ヒト・モノ・カネに関するデータ分析を手がけ、退職者傾向分析、金融機関での商流分析、部品可視化、ヘルスケアに関する分析、サービスデザイン思考などの実績がある。国家予算などオープンデータを活用したビジネスも開発・推進する。海外を含めたIT新潮流に関する市場分析やデータ分析ノウハウに関した人材育成にも携わっている。