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  • 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法

データ分析における心理的側面の深いつながり【第13回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2018年9月25日

事実よりも感情が影響を与える

 ところで2017年の日本の総選挙は、事前の世論調査の通りになった。これに対し、英国のBrexit(EU離脱)に係る投票や、トランプ米大統領が誕生した大統領選では、世論とは真逆の結果になったことは記憶に新しい。グローバルでは、すでに世論調査が外れている。世論調査には構造的な欠陥が2つある。1つは人間の感情の強さを測れないこと。もう1つは質問に対する答えしか分からないことだ。

 事前の世論調査の結果という“事実”よりも“感情”が大切になってきている。このことを「ポスト真実」と言う。2017年の流行語大賞の候補30にも選ばれた。データ分析で予測する場合も、事実や真実だけに目を奪われると真逆の結果になってしまう。感情をどうとらえるかが今後の課題だろう。筆者の感覚では、特に選挙などで競争が接戦の場合は、世論調査と結果は逆になりがちだ。

 米IT企業ではAI(人工知能)は、もはや当たり前のツールである。最近は、相手の心を読み嘘もつく“交渉人”ともいえるAIが登場し始めた。相手の性格や意図を想像して反応を予想する。ハッタリをかけたりもする。これらは「感情コンピューティング」とは呼ばれている。

 筆者は自著『2020年を見据えたグローバル企業のIT戦略』で「エモーションドリブン型(Emotion Driven)」という言葉を用いた。人の感情を理解することでコンピューターが反応するものだ。いずれは、潜在的な意識、つまり、マインド(Mind)にまで対応できれば、「マインドドリブン型(Mind Driven)」になるであろう(第10回で説明)。データ分析によって感情値を分析する時代が訪れている。

 最新のキーワードの1つに「BMI」がある。Brain Machine Interfaceの略だ。人が考えたり身体を動かしたりすると、脳細胞が脳波を発する。BMIを備えたコンピューターは、脳波信号を読み取って、手を使わずにデジタル機器を操作する技術だ。筆者が『2020年を見据えたグローバル企業のIT戦略』で「Brain Computing」として説明したのと同じ考えである。

 さらに最近は、「マインドアップローディング」という言葉も登場している。人間の意識をコンピューター上に移植する技術である。「マインド」と言う限りは、潜在意識も入るのだろう。

データ分析で役立つ5つの心理的ポイント

 データ分析を行う際に役立つ心理的なポイントを筆者の経験から5つ示す。

心理的ポイント1:グループで分析する

嘘を見抜くには、一人の判断ではなく、グループで話し合うのが最善の方法である。自分の見方だけでは偏りがあるためで、他の人と話し合うことで新たな視点が得られ理解も深まる。データに現れた嘘もグループで分析したほうが良いだろう。

 ただし「内集団バイアス」には要注意だ。内集団バイアスとは、あまりに親しい人たちばかりで物事に取り組むと高いパフォーマンスを発揮できる反面、決めつけや思い込みが極端になってしまうことをいう。

心理的ポイント2:リスキーシフトに注意する

 リスキーシフトとは、危機的な状況では過激な意見に引っ張られてしまうことを意味する。分析者が危機的な状況下でデータを分析する際には、このリスキーシフトを思い出してほしい。

 本当に崖っぷちになる手前の状態でリスキーシフトは起きる。つまり、どんどん過激な意見を言った人が偉いということが集団の中で起きる。集団の平均値の意見が、一気に危険な方向へ行ってしまう(図2)。

図2:リスキーシフトの概念