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ビッグデータの法則:その2=振り子現象、すべては繰り返す【第21回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2019年5月27日

世界情勢は左極と右極の繰り返し

 政治・経済・金融の分野では、左極と右極の繰り返しが起こっている。左極では統合化・自由貿易・規制緩和が、右極では分裂・保護貿易・規制強化が、それぞれの特徴だ。時期も繰り返されている(図3)。行き過ぎると逆方向に向かうという自然の流れである。2010年頃から現在は国際的に保護主義が台頭している。

図3:世界情勢の左極と右極の繰り返し

 そして現状は「Cold War(冷戦)II」だとされる。Cold War IIは「第2次冷戦」「New Cold War」「Technological cold war」とも言われる。米国と中国が対峙する状況だ。

 Cold War I(第1次冷戦)時は米国とソ連が対峙していた。その間の1964年に東京オリンピックが、1970年に大阪万博が開かれた。キューバ危機が起こり、最終的にはソ連が解体した。

 Cold War IIでも状況は近似している。2020年に東京オリンピックが、2025年に大阪万博が開かれる。そして北朝鮮問題の台頭と、あまりにも状況が近い。そうなると大国の解体もあり得るのではないかとも思う。

 このような地政学的なリスクを知ったうえで日本の対策を打ち出さねばならない。Cold War Iの1945年~1989年の約45年間に起こったことから教訓を得て2045年頃までの知恵にしたい。

テクノロジーも集中と分散を繰り返している

 世の中の動きをみてきたが、テクノロジーの分野でも振り子現象は起こっている(図4)。1960年代に汎用コンピューターが生まれ事務の効率化が図られた。集中化が起きビジネスが活性化していく。1985年からはPCが登場しコンピューターの大衆化が進み分散化が推進される。この時期は法規制が強くなった。

図4:テクノロジーの集中と分散

 次に、インターネットによるネット産業革命が始まったのは1995年である。米Amazon.comが創業したのは1994年だ。この時期がクラウドコンピューティングの原点だと言える。クラウド内にサーバーとデータが集まり、新たなビジネスモデルが多数発生した。

 クラウドの時代、人間とコンピューターは分離され、コンピューター同士がクラウド内で結びつきイノベーションが起こっている。元来、人間とコンピューターは相性が悪い。両者を引き離すことで、これまでの概念がひっくり返った。まさに社会変革と言えよう。

 2010年頃にはビッグデータが注目を浴び、データを集中に新しいビジネスが考え出される。さらに2015年頃にIoT(Internet of Things:モノのインターネット)が広がりデータが分散していく。ここでもコンプライアンスが強化される。すなわち、集中の際には新しいビジネスモデルが生まれ、分散の際には規制が強まるが、それに対応することでも変革が起こる。

 景気の循環では、家の買い替え需要に関連する「クズネッツの波」(約20年)、設備の平均耐用年数による「ジュグラーの波」(7~10年)、商品の在庫が一時的に過剰になる「チキンの波」(40カ月)が有名だ。

 同じような循環が、産業革命以後、約50年で新しい技術革新が起こっている(図5)。これを「コンドラチェフの波」と呼ぶ。コンドラチェフの波に沿って、人・モノ・金も集中と分散を繰り返す。

図5:テクノロジーの波