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  • 学校では学べないデジタル時代のデータ分析法

時系列の分析で新たな意味を見いだせるメタデータの価値【第34回】

入江 宏志(DACコンサルティング代表)
2020年5月25日

ネットビジネスに本気かどうかをメタデータが示す

 Netcraftとは別に、ネット上にあるコンテンツをアーカイブしている「Internet Archive(https://archive.org/)も分析に使っている。同サイトでは「Search metadata」というラジオボタンを選び、調べたいサイトのURLを入力すると、コンテンツを変更した履歴と、当時の古いコンテンツそのものが検索できる(図3)。サイトのオープン時期やクローズ時期までがわかる。

図3:Internet Archiveの活用例

 そのサイトがネットビジネスに本気かどうかは、Internet Archiveに表示されるグラフの縦棒の多少でわかる。実は図3は、筆者が1996年から2001年までに関わった、あるプロジェクトのサイトの例だ。縦棒が少ないのは、本当にビジネスで使ったのではなく、PoC(Proof of Concept:概念検証)、つまり試行的に実施したサイトだからだ。

 以前、あるネット通販の2つのサイトを分析した際には、Aサイトは、更新頻度も高く真面目にビジネスを行っていると判断できた。一方のBサイトは、とりあえず開設しただけで更新はほとんどなく、通販が本業には見えなかった。実は、通販をポーズに買収を中心とする投資会社だった。

 このような判断もメタデータを使えばできる。読者も取引のある会社のURLを入力し、さまざまなデータを取ってみれば良い。誰でもコンサルティング的な分析ができる。

アウトソーシングの裏側もメタデータで分析できる

 もう1例を挙げる。B2B(企業間)やB2C(企業対個人)のインターネットサイトでは、外部委託(アウトソーシング)しているサイトは数多い。アウトソーサー(アウトソーシングの提供者)と言えば、日本では日本IBM、富士通、NEC、日立製作所、NTTデータが大手だろう。大手から中堅のユーザー企業は、これら5社を中心に、いずれかのアウトソーサーを使っている。

 アウトソーシングの事例は、ニュースや企業のホームページなどに出てくることもあるが、どの企業が、どのアウトソーサーに委託しているかは公表されないケースがほとんどだ。

 だがインターネットには、ありとあらゆるデータがある。アウトソーサー大手5社について、その顧客企業の動き(アウトソーサーの選択、契約期間、更新時期、契約金額、外部委託する目的など)をトレースすれば、その動向も分析対象になる。これも一種のメタデータだ。

 たとえば外部委託の目的は大きく4つある。ビジネス変革、IT変革、サービス品質向上、コスト削減だ。これらもアウトソーシングサービスの一覧といったデータに付随するメタデータだと言える。

 アウトソーシングは2000年頃にブームがあり、多くの大手企業から中堅企業までが、こぞってアウトソースという選択肢を採った。ただビジネスで5年、10年と付き合うと嫌な面も出てくるのか、更改時期にはアウトソース先を変更する企業も少なからず出てくる。この動きも10年以上分析してきたところ、業界ごと、アウトソーサーごと、そして企業規模で傾向があった。

 2000年のブームでは、アウトソーシングの契約期間が10年というものが多かった。そのため2010年前後には契約更新のブームになった。その際、アウトソーサーは2000年に契約を取り損ねた企業をターゲットにした。ターゲットになった企業は、2000年頃は自社運営にこだわりアウトソーシングを蹴っていたからだ。だが同社も最近は、パブリッククラウドの技術を積極的に使っている。