- Column
- ブロックチェーンの仕組みを知り適用業務を考える
なぜブロックチェーンが、これほど騒がれているのか?【第1回】
特徴1:トレーサビリティ(追跡可能性)
ブロックチェーン上でやり取りされた、すべての取引履歴がデータとして格納されるため、個々のやり取りを追跡できる。
特徴2:耐改ざん性(改ざんが不可能)
ブロックチェーン上で、あるブロック内にある情報を改ざんしようとすると、一定の時間内に、改ざんした情報が含まれているブロック以降のすべてのブロックを修正する必要がある。併せてブロックチェーンのネットワークに参加しているPCやサーバーなど(これを「ノード」と呼ぶ)の過半数以上に対し同様の修正を実施しなければならない。ブロックが長くなればなるほど改ざんは困難になり、ブロックチェーンの仕組み上、それは事実上改ざん不可能とされている。
特徴3:透明性(全員が情報を共有)
ブロックチェーンのネットワークに参加している、すべての参加者は、同じ取引情報などを共有する。このため、自身が持つPCやサーバーに格納されているブロックチェーン情報から、独自に情報を取得できる。
特徴4:無停止(ゼロダウンタイム)
ブロックの同じ情報を分散して保管しているため、ブロックチェーンのネットワークに参加しているPC/サーバーの一部が動作しない状態になっても、他のPC/サーバーでサービスを継続できる。PC/サーバーが復旧すれば改めて情報の同期が図られる。
特徴5:低コスト
ネットワークに参加するPC/サーバーが分散動作することでブロックチェーンの仕組みが実現されており、大型のコンピューターが不要であったり冗長構成を採る必要がなかったりすることから低コスト化が図れるとされている。
ただし、この点については、正直なところ、現時点では意見が分かれるところだ。確かに、ブロックチェーンでは、従来システムでは一般的な、冗長構成を採るための待機系システムや、障害時に自動的に切り替えるための監視/切り替え用ソフトウェアなどは不要になる。しかし、ブロックチェーンのプログラムは汎用性がまだ低く、その開発コストは高い。システム全体としての低コスト化には時間がかかりそうである。
社会がトレーサビリティ、耐改ざん性、透明性を求めている
これら5つの特徴のうち特に、トレーサビリティ、耐改ざん性、透明性という3つの特徴が、これほどまでにブロックチェーンが騒がれている理由である。各種サービスに対する信頼性を高められるからだ。仮想通貨は、これらの特徴を生かしたアプリケーションの1つである。
トレーサビリティを必要とするアプリケーションは今後、増えていくと考えられる。食品の安全性の確保・証明などが、その1分野。栽培や飼育から、収穫、加工、製造、流通までの状態を、育った土壌や与えられた肥料、温度や湿度などの保管情報などを含めて管理・追跡する仕組みのニーズは高い。
2020年に開かれる東京オリンピック/パラリンピックにおける選手村の食事食材では「農業生産工程管理(GAP)」の認証を受けた食材しか使用できないとされるし、昨今のインバウンド需要の高まりでイスラム圏からの旅行者に対しては豚などの食材が使用できない。これまでも一部でトレーサビリティシステムが構築されているが、その対象はさらに広がることだろう。
改ざんに対する認識も大きく変わってきた。決裁文書の改ざんや、工業製品などにおける検査結果の改ざんなどの事件が多発している。しかも、これらが組織ぐるみで実施されていたことが明らかになっている。
ブロックチェーンに書き込まれた情報は、改ざんできない状態で管理される。文書の改ざんや産地の偽装などを予防できることになる。
これらに並行して重要なのが透明性である。トレーサビリティや改ざん防止のためのシステムを構築したとしても、その証明が当事者によるものでは信頼性に欠ける。
ブロックチェーンでは、ネットワークの参加者間で情報を共有するため、ステークホルダーによる相互牽制力が働いている。安全性や正確さを自社システムでアピールするよりも、第3者が関与する仕組みのほうが、より客観的な情報としてアピールできることになる。