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ブロックチェーンのこれから【第6回】

唐澤 光彦(NTTテクノクロス エンタープライズ事業部マネージャー)
2019年1月10日

これまで、ブロックチェーンの特徴や、その特徴がどのような業務に活かせるのか、さらには、技術的な観点からブロックチェーンがどのような情報を管理しているのかを解説してきた。今回は、弊社が参加した実証実験の内容を含め、ブロックチェーンの“これから”を考えてみたい。

 ブロックチェーンの特徴が、さまざまな業務に利用できると解説してきた。しかし2018年末の時点で、日本国内ではブロックチェーンを用いた商用サービスは、あまり見かけない。Bitcoinなどの仮想通貨以降、ブロックチェーン普及のきっかけになるサービスが誕生していないことが要因だ。

 そのため、ブロックチェーンを用いたサービスのアイデアを検討し、それが適正かどうかの検証を繰り返しているのが実状だ。そうした実証実験の一例として、弊社が参加した「札幌市ICT活用プラットフォーム『DATA-SMART CITY SAPPORO』」を紹介する。

オープンデータ2.0により利用可能なデータは増えているが

 DATA-SMART CITY SAPPOROは、札幌市が2017年3月に策定した「札幌市ICT活用戦略」における「イノベーション・プロジェクト」に位置づけられたデータ活用のためのプラットフォームである。さっぽろ産業振興財団が構築し、札幌市と共同で運営している。

 そこでは、官民が保有するオープンデータやビッグデータを収集・管理する機能に加え、イノベーション創出の契機になるよう、市内外の民間事業者や大学・研究機関、市民などによるデータ活用を促進するための窓口機能を提供している。

 オープンデータとは、著作権や特許などの制限なく自由に使え、再利用や再配布などができるデータ群のことだ。近年は、「オープンデータ2.0」と位置づけて、国や自治体が行政データのオープン化を盛んに進めている。市内の避難場所一覧や、緊急時給水管路、鉄道の運行状況など、さまざまな情報が公開されている。

 札幌市も、オープンデータをDATA-SMART CITY SAPPORO上で一般公開している。市内の民間企業が持つデータもあわせて提供することで、地域経済の活性化施策に活用されている。

 一方で、文書の改ざんが社会問題になっている。情報の電子データ化は進んでいるものの、蓄積されたデータの正当性は管理者に委ねられていることが課題である。

データが改ざんされていないことをブロックチェーンで証明

 そこで2018年1月から3月にかけて実施された実証実験では、そうしたオープンデータの登録・利用における透明性や、活用時に正しいデータが取り扱われていることを保証する真正性の確保において、ブロックチェーン技術が効果的であるかどうかを検証した(図1)。

図1:「DATA-SMART CITY SAPPORO」にブロックチェーン技術を適用した実証実験の概要

 具体的には、DATA-SMART CITY SAPPOROとブロックチェーン技術を使って構築した「真正性検証システム」を連携させ、オープンデータが正しいデータとして運用されていることを確認した。オープンデータの提供者・利用者の操作状況もブロックチェーン上で管理し、ブロックチェーン技術を適用したプラットフォーム運用の効果も測定した。

 実験結果として、次の2点を確認できた。

(1)オープンデータ情報のブロックチェーンによる保証

 DATA-SMART CITY SAPPORO上のオープンデータが登録時の内容と同一であることを、ブロックチェーンによって検証できた。意図的に特定のオープンデータファイルを改ざんしたところ、その改ざんが検知できることを確認した。

(2)システム運用状況の検証

 オープンデータに対する操作をブロックチェーン上で管理することで、システム運用状況を検証し、(1)で示した意図的な不正操作により、どの時点で改ざんされたのかが判断できることを確認した。

 なお実験では、外部への影響を考慮して、意図的な改ざんや不正操作においては一般公開していないデータを使用している。

 本実証実験を通じて、ブロックチェーン技術により、システムに登録されたデータやシステム運用状況の真正性を、利用者も検証できることが確認できた。この特徴は、さまざまな分野への応用が期待できる。