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- ブロックチェーンの仕組みを知り適用業務を考える
なぜブロックチェーンが、これほど騒がれているのか?【第1回】
取引情報を扱うスマートコントラクトが可能に
トレーサビリティ、耐改ざん性、透明性を満たすシステムをブロックチェーンでは、どこかで故障が発生してもサービスが停止しない仕組みとして、低コストで実現できると期待されている。
仮想通貨以外の価値を取引できるように拡張されたのが、「スマートコントラクト」の仕組みだ。取引情報をブロックチェーンに書き込むための独自のプログラムで、契約条件などをあらかじめ定義しておき、その条件を満たせば取引が成立したとして、結果をブロックチェーンに書き込む(図4)。
現状、各種の書類を人手でやり取りしている取引現場はいくらでもある。それらがスマートコントラクトでは、取引の成立、すなわち契約に関する手続きが自動的に執行される。その結果は、通信ネットワーク基盤であるブロックチェーンにより、確実に関係者に通知されるのだ。
たとえば、みなさんにも、こんな経験があるだろう。身体の具合が悪くなり近所のクリニックなどを受診する。そこで手に負えないようなら紹介状などを書いてもらい、総合病院に向かう。総合病院では症状やクリニックでの診察結果などを口頭で再度伝えなければならない。ここで情報が正確に伝わらないと再検査が実施され費用を請求される。このとき書類などを運ぶ役割は患者自らが担っていることになる。
ここにスマートコントラクトを適用するとどうか。クリニックの検査結果は、病院の医師や薬局の薬剤師などとの間で情報共有が図れ、情報が迅速かつ正確に伝わり柔軟な対応が期待できる。二重の検査が発生することもない。ヘルスケアで考えれば、ケアマネージャーや訪問看護師、理学療法士、ホームケアショップなど、より多くの関係者の間での情報共有が可能になる。
スマートコントラクトでは、仮想通貨以外の資産や著作権といった各種の情報を取り扱うことができる。
業種や職種をまたいだ連携が容易に
上述した病院の例のように、異なる組織や職種、あるいは異業種、多国間にまたがって情報共有が必要な場面は少なくない。これまでは、業種や職種、地域などによってシステムが個別に構築されてきたため、それらの接続が難しく、なかなかスムーズな連携が図れなかった。それをブロックチェーンという通信ネットワーク基盤で接続することで、より柔軟な情報共有が実現できるのだ(図5)。
しかも、ブロックチェーンの特徴で説明したように、関係者間の情報共有だけでなく、文書やカルテの改ざんを防止したり、だれがいつ変更を加えたかも管理したりが可能になる。
システム間連携が複雑で人手や書類に頼ってきた多くの業務プロセスの改善や、信頼性・安全性の確保を、これまでになく容易にする通信ネットワーク基盤。それがブロックチェーンであり、大きな期待と共に注目を集めているわけである。
次回は、ブロックチェーンがどのような業務に適用できるのかについて、より詳細にみてみたい。
唐澤 光彦(からさわ・みつひこ)
NTTテクノクロスエンタープライズ事業部 マネージャー。2016年からブロックチェーン関連の開発業務に就き、ブロックチェーン可視化パッケージ「ContractGate/Monitor」の企画・製品化・プロモーションを担当。ブロックチェーンの仕組みや事例を解説するセミナーなどにも登壇している。入社当時からセキュリティ関連部署に属し、プログラム開発やシステムエンジニア業務を経験の後、製品企画や製品化、プロモーション活動に従事してきた。これまでに、特権ID管理ソリューションの「iDoperation」、IT資産管理ソリューションの「iTAssetEye」の製品化・立ち上げに携わっている。