- Column
- ブロックチェーンの仕組みを知り適用業務を考える
ブロックチェーンの業務適用に向けた実証実験の中身【第2回】
Hyperledger Fabric、Ethereum、独自開発の3派に分かれる
数々の実証実験には、ブロックチェーン技術そのものを提供する「ベンダー」と、アプリケーションなどを開発する「パートナー」、そして利用企業(ユーザー)が参加している。ベンダー、パートナー、ユーザーの相関関係を示したのが図3だ。
現在、ブロックチェーンのプラットフォームは大きく、(1)「Hyperledger Fabric(ハイパーレジャー・ファブリック)」、(2)「Ethereum(イーサリアム)」、(3)独自開発の3種類に分けられる。
Hyperledger FabricとEthereumはいずれもオープンソースソフトウェア(OSS)のブロックチェーンを使ったアプリケーションを開発するためのプラットフォームである。独自開発のプラットフォームには、「Corda」や「ripple」「mijin」「Hyperledger Iroha」「miyabi」など、海外だけでなく日本のスタートアップ企業が開発する“日本発”のものもある。
これら3つのプラットフォームを軸にベンダーをみると、主にHyperledger Fabric系を扱うのは、富士通や日立製作所など大手ITベンダーが中心だ。これに対し、主にEthereum系を取り扱うのはクラウドベンダーである。独自開発に取り組むのは、スタートアップなどの企業が中心だ。
パートナーには、中堅のシステムインテグレーターや受託開発型のスタートアップ企業が多い。NTTデータやNTTテクノクロスのように、Hyperledger FabricとEthereumなど複数のブロックチェーンに対応する企業も登場している。電力や金融など、特定業種に特化したISV(独立系ソフトウェアベンダー)も存在する。
これらベンダーが直接、あるいはパートナーと共に、ユーザーの業種ごとにブロックチェーンの利用やブロックチェーンアプリケーションを提案している。その結果としての具体的な成果の1つが実証実験だといえる。
デジタル変革への期待がブロックチェーンの追い風に
ブロックチェーンの実証実験が活発化した背景には、デジタルトランスフォーメーション(DX)への期待の高まりがある。DXとは、デジタルテクノロジーによって従来の業務やビジネスを破壊し、新しいビジネスモデルを創造するための取り組みだ。
DXの各業界の動きを示す言葉として、「業界 × テクノロジー」の組み合わせによる造語が次々と生まれている。金融業界の「FinTech(ファイナンス × テクノロジー )」をはじめ、医療業界の「MedTech」、ヘルスケア業界の「HealthTech」、農業分野の「AgriTech」、教育分野の「EdTech」、不動産業界の「ReTech」などがある。
これらのデジタル化の中には、ブロックチェーンとの連携も検討範囲に含まれている。以下、業界の別に、それぞれの実証実験の動向を概観してみよう。
金融業界の動き
地銀や証券会社は、コンソーシアムを結成し大規模な検証に取り組んでいる。「金融サービスプラットフォームコンソーシアム」は、岩手銀行が青森銀行、秋田銀行、山梨中央銀行などと共に立ち上げた。2018年1月31日からブロックチェーン技術を活用した金融サービスのプラットフォーム構築に着手している。
「内外為替一元化コンソーシアム」は、SBIホールディングスが中心となって立ち上げた。2018年3月9日時点で61行が参加し、ブロックチェーン上のアプリケーションを開発している。まずは個人間送金に対応すべく、住信SBIネット銀行とスルガ銀行、りそな銀行の3行が先行し商用化を目指している。
ブロックチェーンの代表例といえる電子マネー(地域仮想通貨)が各地で発行されている。飛騨信用組合の「さるぼぼコイン」、あべのハルカスにおける「近鉄ハルカスコイン」、かすみがうら市と富士市吉原商店街振興組合における「NeCoban」、山陰合同銀行による「GOGIN・COIN」などがある。
保険業界では、申込書類や検定情報の電子化の実証実験が進められている。