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ブロックチェーンの業務適用に向けた実証実験の中身【第2回】

唐澤 光彦(NTTテクノクロス エンタープライズ事業部マネージャー)
2018年9月6日

ブロックチェーンの適用業務を考えていくに当たり前回は、ブロックチェーンが今、なぜ騒がれているのかについて、ブロックチェーンが持つ特徴から考えてみた。今回は、ブロックチェーンが、その特徴を発揮できる業務の条件を整理したうえで、現在取り組みが進んでいるブロックチェーンの実証実験の動向をみてみる。

 前回、ブロックチェーンには5つの特徴があり、その中でも特に、トレーサビリティ、耐改ざん性、透明性という3つの特徴が、ブロックチェーンが注目されている理由だと説明した。

ブロックチェーンが適用できる業務の4条件

 これらの特徴から、ブロックチェーンがどのような業務に適用できるのか、その条件を整理してみよう。

条件1:サービスに対して複数のプレーヤーが存在する

 あるサービスを実現するにあたり、利用者や、提供者、仲介業者、異業種の事業者など、複数のプレーヤーが存在し、それらのプレーヤー間で情報を連携する必要がある業務。

条件2:競合同士でも協業ができる業務

 プレーヤー間の利害関係が大きい、すなわち競合しているものの、自社単独ではコストがかかる割にメリットが少なく、共通化などによる協業が図れる業務など。業界の底上げが図れ、コスト削減により競合との差別化に注力できるようになる(図1)。

図1:競合同士による協業のケース

条件3:異業種間などシステム連携が難しかった業務

 業種が異なることからシステム連携が進まず、書類やFAXによって情報を共有している業務。

条件4:確実な根拠情報が求められる業務

 金銭を含む取引履歴や、公共機関や医療機関における各種文書の確実な修正履歴など、根拠としての確実性が求められる業務。

金融分野が先行し各種実証実験が進行中

 上記の条件を満たす業務を探りながら、ブロックチェーンを使った実証実験が各所で実施されている。

 図2は、2016年度(3月期)から2018年度までに国内で実施されたブロックチェーンの実証実験をNTTテクノクロスが独自に調査し、うち70件を適用要件の別に分類したものだ。

図2:適用要件で分けた2016年度(3月期)から2018年度に国内で実施されたブロックチェーンの実証実験

 図2を時系列に見ると、本格的に事例が出始めたのは2016年度下期からで、2017年度下期まで、ほぼ継続している。2018年度も同様に推移するとみられる。

 適用業務の別にみれば、金融系が先行した。貿易金融や送金、電子マネー(ポイント管理、地域仮想通貨の取り扱いなどを含む)などである。その後、不動産や製造、流通などへと、業種の幅が急激に広がってきている。