• Column
  • ブロックチェーンの仕組みを知り適用業務を考える

ブロックチェーンの基礎知識と合意形成アルゴリズム【第4回】

唐澤 光彦(NTTテクノクロス エンタープライズ事業部マネージャー)
2018年11月1日

 合意形成アルゴリズムは、ブロックチェーンにデータを書き込める「代表者」を選定するためのルールである。複数のノードで協同してブロックを維持するために、ブロックを誰が追加するかを明確に決める必要がある。

 合意形成アルゴリズムには、いくつかの種類があり、それぞれにメリットやデメリットがある。同じブロックチェーンでも使用方法が異なる。以下では、3つの合意形成アルゴリズムについて解説する。

アルゴリズム1:PoW(Proof of Work:プルーフ・オブ・ワーク)

 「仕事(Work)」を最も早く完了させた者を、ブロックチェーンにデータを書き込める代表者とするアルゴリズムである。

 ブロックチェーンでは、取引内容をブロックチェーンに書き込む作業を「マイニング」と呼び、このマイニング作業を実行する人々を「マイナー」と呼ぶ。マイナーに対し、CPUの計算量に依存する「仕事」を与え、最も早く完了させたマイナーを代表者にする。

 PoWのメリットは、CPUパワーを使って、ひたすら計算を実施するため、改ざんを行いにくい点である。

 デメリットは、膨大なCPUパワーを必要とするため非常に電気代がかかることと、「51%攻撃」と呼ばれる悪意を持ったマイナーが、ブロックチェーンネットワークの51%以上を支配すると不正操作が可能になってしまうことだ。

 51%攻撃は、古くから知られる手法である。仮想通貨を持つ者が自ら攻撃すれば通貨価値が下がることと、膨大なCPUパワーを調達するコストに対する報酬が見合わないことから、実際仕掛けるメリットは非常に少ないと判断されてきた。

 しかし2018年5月、「Bitcoin Gold〔通貨単位はBTG〕」「モナコイン〔同MONA〕」「Verge:バージ〔同XVG〕」「ZenCash〔同ZEN〕」が51%攻撃の標的になってしまっており、通説が崩れてもいる。

アルゴリズム2:PoS(Proof of Stake:プルーフ・オブ・ステーク)

 保有コイン残高によってブロックチェーンへの書き込み可能な代表者を決める方法である。PoWの欠点を克服することを目指した合意形成アルゴリズムであり、CPUの処理能力による影響を受けない。

 メリットは、PoWに比べてブロックへの書き込み決定時間が早く、消費電力が少ないことと、51%攻撃を受けにくいことが挙げられる。51%攻撃では、過半数を超えるコインを所有する必要があるために、それにかかるコストが膨大なためだ。コインの市場価値が高まれば高まるほど買い占め資金が必要になり、攻撃が難しくなる。

 デメリットとしては、通過の保有量が多い人ほどマイニングしやすいため通貨を貯め込む人が増え、結果的に通貨の流動性が下がる可能性があることだ。

アルゴリズム3:PBFT(Practical Byzantine Fault Tolerance:プラクティカル ・ビザンチン・フォールト・トレランス)

 特定の管理者グループによる合議制によって、3分の2以上が合意すればブロックチェーンへの書き込みを許可する方法である。クローズドなネットワーク、つまりはコンソーシアム型やプライベート型で使われる。

 メリットは、他の方式に比べ高速であることと、ファイナリティが得られる、つまり分岐したブロックが作られず、ブロックが確定するタイミングが明確であることだ。

 デメリットは、3分の2以上の合議が得られなければブロックが作成されず、システムが停止してしまうことである。

 次回は、ブロックチェーンで管理している情報について掘り下げていく。

唐澤 光彦(からさわ・みつひこ)

NTTテクノクロスエンタープライズ事業部 マネージャー。2016年からブロックチェーン関連の開発業務に就き、ブロックチェーン可視化パッケージ「ContractGate/Monitor」の企画・製品化・プロモーションを担当。ブロックチェーンの仕組みや事例を解説するセミナーなどにも登壇している。入社当時からセキュリティ関連部署に属し、プログラム開発やシステムエンジニア業務を経験の後、製品企画や製品化、プロモーション活動に従事してきた。これまでに、特権ID管理ソリューションの「iDoperation」、IT資産管理ソリューションの「iTAssetEye」の製品化・立ち上げに携わっている。