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ブロックチェーンの基礎知識と合意形成アルゴリズム【第4回】

唐澤 光彦(NTTテクノクロス エンタープライズ事業部マネージャー)
2018年11月1日

ブロックチェーンが管理するのは業務システムが持つ情報の一部

 第1回で、ブロックチェーン上で動作する専用プログラムとして「スマートコントラクト」を紹介した。業務アプリケーションやサービスは、ブロックチェーンとスマートコントラクトのみを基盤に動作するわけではない。実際の構成は図4のようになる。つまり、業務システムで管理する情報の一部をブロックチェーンで管理するといった構成だ。

図4:ブロックチェーン関連のシステム構成例

 業務アプリケーションは「ブロックチェーンアクセスライブラリー」を介してブロックチェーンにアクセスする。ブロックチェーンアクセスライブラリーは、Ethereumでは「web3js」、Hyperledger Fabricでは「SDK」として提供されている。

 その後、ブロックチェーン実装部分(EthereumやHyperledger Fabricなど)からスマートコントラクトが呼び出されて処理が実行され、ブロックチェーンにアクセスする。

用途を左右するネットワークモデルと合意形成アルゴリズム

 ブロックチェーンは、そのネットワークモデルにより(1)パブリック型、(2)コンソーシアム型、(3)プライベート型の3つに分類される(表1)。最大の相違点は、管理主体の有無と合意形成の方法だ。ここから、報酬の必要性や処理のスループットが異なってくるため、用途においても向き不向きがでてくる。

表1:ネットワークモデルによるブロックチェーンの分類
ネットワークモデル*1パブリック型コンソーシアム型プライベート型
別称PermissionlessPermissionedPermissioned
管理主体*2なし複数の組織単一の組織
ブロックチェーンネットワークへの参加自由(不特定多数)許可制許可制
データ閲覧自由制限可能制限可能
合意形成*3中央排除型(PoW、PoS)←(どちらもあり)→中央集権型(PBFT)
採掘報酬必要←(どちらもあり)→任意(プロダクトに依存)
スループット←(どちらもあり)→
利用例主に仮想通貨。Bitcoin〔BTC〕、Ethereum〔ETH〕、nem〔XEM〕など。ただし「MUFGコイン〔MUFGコイン〕」などプライベート型の仮想通貨も存在する。〔〕内は通貨単位スマートコントラクトを利用した資産所有者譲渡など。エンタープライズ市場(B2Bビジネス)では、複数の組織が参加して提供するコンソーシアム型が多いスマートコントラクトを利用した資産所有者譲渡など。可用性や改ざん検出、コストメリットなどのオペレーション上のメリットを目的としている場合が多い
*1 Ethereumは、パブリック型、コンソーシアム型、プライベート型のいずれにおいても適用可能。Hyperledger Fabricは、コンソーシアム型とプライベート型のみ適用できる
*2 エンタープライズ市場のようなケースでは、安定したサービスを継続して提供するために、ブロックチェーンプラットフォームを運用するための管理者が必要になる
*3 PoW:Proof of Work  PoS:Proof of Stake  PBFT:Practical Byzantine Fault Tolerance