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Amazon Goが提供する新たな顧客体験、店舗を出るときのドキドキ感がたまらない【第2回】

工藤 卓哉(アクセンチュア)
2018年10月11日

 大変重要なポイントとしては、ユニークユーザーの顔認識だけでアイテム投入を紐付けていない点が挙げられます。どちらかというと、QRコードがユニークIDとして機能し、そこに1対多の関係で紐付いた顔認証と、バッグに投入された商品の画像認証が紐付くという形式が採られています。

 このため、私は家族で1つのQRコードをシェアしていますが、それがAmazonのアカウントに紐付いているため、複数の機械学習や追跡技術によって妻と私が混同されることなく、私が買い物カゴに入れた商品だけを正確に認識します。

 専用アプリを持っていない友人を連れて入店した際は、QRコードを共有してゲートを通過すると、私のQRコードを起点に友人の顔と私の顔がタグづけされて追跡が開始された点にも注目しました。つまり、QRコードがあくまでショッピングの決済対象IDになっており、そこに紐付けたクレジットカードで決済が完結するようになっているのです。このシンプルさが売りと言えるでしょう。

 店内に入り天井を見上げると、高精度のカメラやセンサーらしきデバイスが所狭しと設置されています。こちらについては後で説明しますが、店舗設計もシンプルで、割とゆとりがあります。通常のドライフードからサンドイッチなどの加工食品を含め、大抵のコンビニで販売されているような食品は手に入ります。

混乱するような購買行動でもエラーなし

 Amazon Goで最も面白いカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)は何かと言えば、やはりレジがないというところです。ほしい商品を淡々とピックアップしていき、最後は商品を入れたバッグを持ってゲートを通過して店外に出るだけです。この店舗を出るときのドキドキ感には、たまらないものがあります。

 課金は数分後まで待たないと完了しませんが、数分後には正確な計算に基づいた料金が課金され、滞在時間の情報とともにオンラインで領収書を受け取れます。システムエラーを狙って、わざと商品を何回もつかんだり戻したり、ラベルを隠しながらバッグに入れたり、あるいは複数個を選んだ後に1個だけ戻したりなど、さまざまな動作を試してみましたが、実に正確な領収書が送られてくるのは驚きです。

 人工知能も、ここまで意識せずに利活用が進んでくると、カスタマーエクスペリエンスが劇的に変わる訳であり、素晴らしいと言えるでしょう。

写真3:「Amazon Go」の店内

 次回は、このAmazon Goのドキドキ感を実現しているテクノロジーについて、もう少し深掘りしてみましょう。今回、Amazon Goに行く前に、ディープラーニングで著名なソーク研究所のテレンス・セジュスキー(Dr. Terrence Sejnowski)教授と対話する機会もありましたので、その内容もご紹介します。

工藤 卓哉(くどう・たくや)

アクセンチュア Data Science Center of Excellence グローバル統括、アクセンチュア アプライド・インテリジェンス日本統括マネジング・ディレクター 兼 ARISE analytics Chief Science Officer。