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  • DX時代に不可欠なデータリテラシー入門

データを操るための「データリテラシー」の定義【第1回】

今井 浩(クリックテック・ジャパン カントリーマネージャー)
2020年7月27日

データリテラシーは現代人の基礎知識

 では、データリテラシーとは、どのようなものでしょうか。米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)とエマーソン大学は、データリテラシーを次のように定義しています。

「データを読み、使い、分析し、論じる能力」

 これら4つの能力について、詳しく見ていきましょう(図2)。

図2:データリテラシーを構成する4つの力

データを読む

 「読む」の意味を辞典で調べてみると、たとえば『大辞林』(三省堂)は「視覚によって、物の形・色・様子などを知覚する」や「何かを見て理解する」としています。

 読む行為の対象をデータにすれば、「データを読む」力とは、「データから得られた情報から何かを知覚し、理解していくこと」になります。ここでのデータには、表やグラフなど、さまざまな形式で表現されたものを含みます。

 データを読む能力があれば、データから自身のミッションに必要な理解を導き出し、種々の活動に反映することができます。

データを使う

 「データを使う」力とは、データから得た理解に基づき、実際の暮らしやビジネスにおけるミッションに合わせて行動を起こすことです。

 データの使い方はそれぞれです。たとえば企業内には種々の業務や役割があるように、データとの関わり方はみな同じではありません。データサイエンティストや、データアナリスト、ビジネスユーザー、エグゼクティブのそれぞれが、組織の中で求められる役割やミッションに応じてデータを正しく使うことが大事です。

データを分析する

 データを分析するとは、数学や統計などの技術を通じてデータから何らかのインサイト(洞察)を引き出すことです。

 分析結果の表示形式は多岐にわたります。視覚的に分かりやすく簡潔に表示することが有効ですが、グラフにしても多種多様な形式があります。データに応じて最適な形式を選ぶ必要があります。

データを論じる

 「論ずる」の意味を辞典で調べてみると、「考えや行動、理論を支持する理由を述べる」(大辞林)とあります。その目的は、何らかの理由を述べながら、相手を説得することです。

 データリテラシーの文脈で言えば、データを論じるとは、「自分の考え、行動、理論をデータを用いて示していくこと」です。各種のツールなどを使ってデータを分析した結果に、人間が持つ叡智を加えて改善していく過程だとも言えます。

 データ分析の経緯や結果が正しいかどうか論じられるようになれば、これまでの「経験や勘」だけによる判断から脱却できます。企業がデータ志向やデータ主導型と呼んでいることのゴールは、だれもがデータを論じられる状況になることです。

データリテラシーを高めよう

 これら4つの力からなるデータリテラシーは、データ活用の効果を高め、企業のビジネスや個人の暮らしを力強く躍進させる可能性を秘めています。時代を先取りし、これからのビジネスや社会を継続的に成長させていくには、データリテラシーが欠かせません。

 そして企業にすれば、組織全体にデータリテラシーを浸透させるための仕組みや文化を育てていく必要があります。

 次からは、データリテラシーの4つの力のそれぞれについて、より具体的に解説していきます。

 なお本連載は、データ活用のためのオンライン学習プラットフォーム「データリテラシープロジェクト」が提供する動画コンテンツを参考に構成しています。動画も併せてご活用ください。

今井 浩(いまい・ひろし)

クリックテック・ジャパン カントリーマネージャー 1970年生まれ。1992年に日本IBMへ入社し、営業職とともに1999年までアメリカンフットボール選手として活躍。SAPジャパン、日本マイクロソフトを経て2014年よりEMCジャパン データ保護ソリューション事業本部長。2019年10月より現職。「PASSION」「PLAY TO WIN」「ONE TEAM」が座右の銘。