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  • 〔誌上体験〕IBM Garage流イノベーションの始め方

DXに不可欠な共創にスピードを、変革にスケールを【第1回】

木村 幸太(日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業本部 IBM Garage事業部 部長)
2020年9月23日

組織としての継続性を担保するガバナンスモデル

 方法論と並び、企業におけるイノベーション創出/DXで重要になるのが、プロジェクトを推進時におけるガバナンスである。既存ビジネスの安定性を求めながら、変革やイノベーション創出に挑戦し続けるには、社内外の資源を柔軟に配分し、多様な人材を集められるように組織の流動性を高め、継続的に取り組めるような評価制度や仕組みが不可欠だからだ。

 IBM Garageのガバナンスモデルは「Fishbowl(金魚鉢)」と呼ばれる。これは「ガレージの内側からも外側からも状態が見える」という状態を指している(図3)。

図3:IBM Garage ガバナンスモデル

 ガレージの内側とは、図3における緑色部分の「Squad」に該当する。Squadは、案件を進めるのに必要なスキルを持つメンバーで構成されるチームである。プロダクトオーナー(PO)や、スクラムマスター(SM)、デザイナー、コンサルタント、デベロッパー、データサイエンティスト、アーキテクトなどからなる。

 Squadの役割を維持していくには、ガレージの外側に位置する「Interface Team」(図3の青色部分)の役割も重要になる。Interface Teamは(1)Investment Boardと(2)Garage Boardで構成される。

 Investment Boardは、投資判断を担う機関で、CFO(最高財務責任者)やガレージの予算を持ち、「Go/No Go」の投資判断をする。

 Garage Boardは、Squadが連続的に取り組めるように支援する機関だ。大きく次の3つの役割を担う。

役割1 :社内にさまざまな案件やテーマがある中で、Squadが何に取り組むべきかを計画し、ROI(投資対効果)やKPI(重要業績評価指標)なども検討する

役割2 :案件を進めるために必要な社内人材や、外部協力会社との調整を図る

役割3 :Squadが働きやすいように、既存の仕組みの中で制約や障害があれば取り除く。たとえばCOVID-19下でのリモート環境整備なども該当する

コグニティブ・エンタープライズは数カ月では実現しない

 コグニティブ・エンタープライズの実現や、IBM Garageのような仕組みを社内に定着させるには、非常に多くの苦労が伴う。社員1人ひとりが信じて行動できるようにマインドやカルチャーの醸成も不可欠だ。それだけ、数カ月で達成できるものでもない。

 既に苦労をされている読者はもちろん、今後取り組まれる予定の読者にとってIBM Garageの考え方や手法は、IBM Garageを実際に利用するしないにかかわらず、間違いなく参考になるはずである。次回以降、IBM Garageの誌上体験を楽しんでいただき、是非、各社のイノベーション創出/DXに取り組んでいただきたい。

木村 幸太(きむら・こうた)

日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業本部 IBM Garage事業部 部長。IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に入社後、さまざまな業種の企業への営業やCRM、マーケティング戦略の策定・実行支援、BPR、システム化構想から導入など経験する。2018年1月にスタートアップを支援するIBM BlueHub、同年10月よりIBM GarageのLeadに着任。近年は、イノベーションやデジタル変革をテーマに、デジタル戦略やアジャイル案件を数多く手がけている。