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  • データ活用力をDataOpsで高める

データ活用の障壁をDataOpsで回避する【第1回】

橋本 秀太郎(日鉄ソリューションズ DX推進&ソリューション企画・コンサルティングセンター エキスパート)
2020年10月9日

「DataOps」とは、事業を持続的に発展および貢献させるためにデータ(Data)と業務(Operations)を結びつけるというコンセプトを指す言葉である。米Gartnerが2018年7月に公開したハイプサイクルで黎明期にポジショニングされたばかりの新しい概念だ。本連載ではDataOpsの実現方法を解説していく。第1回は、DataOpsが企業のデータ活用に、なぜ有効なのかを説明する。

 データ活用力の強化に取り組み、実用化まで進んで成功に結びつけた企業はごく一部に限られる。「データを活用するテーマに有望なものが見つからない」「要件を満たす成果が出ない」「現場への導入が進まない」「現場に導入しても使われなくなってしまう」など、失敗するパターンは、さまざまだ。

 なかでも、特に問題になりがちなのは、部門間の連携が障壁となるケースである。事業を持続的に発展および貢献させるためにデータ(Data)と業務(Operations)を結びつけるというコンセプトであるDataOpsは、この部門間の連携に関する問題を解決し、企業内のデータを競争力に結びつけるのに有効だ。

データ活用の理想形を全社で共有しよう

 特定の部門内だけでデータ活用を実現できるケースはまれであろう。データを生み出す部門とデータを活用したい部門が異なっていることもあれば、業務部門内に専門スキルを持つ人材がおらず全社の研究部門や外部ベンダーにデータ分析の支援を依頼することも多い。データを生成して蓄積・加工するシステムを開発・運用するIT部門との連携が必要となることもよくあり、データ活用は一般に部門横断的な活動になりがちだ(図1)。

図1:データ活用は社内の複数の部門が連携する必要がある

 複数の部門が関係する横断的な取り組みでは、各部門のミッション範囲に合わせた局所最適解の施策になりがちだ。部門間の連携が不足してしまい、以下のような、さまざまな障壁にぶつかる可能性が高い。

データが複数の部門に散在し独自の収集・蓄積方法を取っている。そのため、どこに、どのようなデータがあるのか探せなかったり、データの意味や得られた背景がわからなかったり、形式や質がバラバラで統合して扱えなかったりする

データ活用を担当する業務部門と分析部門の連携が不足し、真のニーズや要件を分析部門が把握できないまま分析が進む

必要なデータを取得するためのシステム変更に、IT部門が非協力的である

データ傾向の変化で機械学習などのモデル精度が悪化しているのに、データ活用を担当する業務部門が気づかず放置される

 こうした障壁を解消しデータ活用力を育てていくには、理想となる最終的な形態をあらかじめ想定しておく方法が有効である。目標となる理想形を具体的に示せれば、現状とのギャップを部門横断的な視点で洗い出しながら対策を打てる。

 どのようなデータや基盤およびツールがあれば活動を支援できるかという意識も組織全体で統一を図ることで、成功への道筋から大きくぶれることなく導入を進めることも可能になる。

 こうした理想形の1つとなるのが「DataOps」を使ったデータ活用方法である。DataOpsは、どのようなものか、具体的に説明していこう。