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デジタルツインに必要なデータ基盤の要件(後編)【第5回】
(4)連携インタフェース
連携インタフェースは、データ基盤に格納・整理したデータを様々なアプリケーションに開放する、いわばデータの流れの“出口”の役割を担います。
業務において、データの活用方法は一様ではありません。現場の担当者などがデータを直接扱う場合には、工場やプラントの運転状況を示すダッシュボードの形で表示したり、保守計画を作成するために設備や過去の保守記録を探す検索画面を用意したりする必要があります。設備の作業指示や技術仕様書を3D(3次元)データとして現場に提供するケースも増えつつあります。
担当者を介さず、データに設定されたAIモデルを適用して通知を出したり、特定のデータが入力されたらレポートを自動生成するというケースもあるでしょう。
同様に、アプリケーション開発に求められる要件も様々です。短期間で必要最小限の機能を実現したい場合があれば、工数をかけて現場のオペレーションに合わせて作り込みたい場合もあります。開発要員の経験・スキルの条件も異なります。
そのため、システム連携インタフェースとしてのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)は、どのような開発環境でも使いやすい標準に基づくオープンなインタフェースであることが望まれます。昨今、ソフトウェア開発の主流はブラウザで動作するWebアプリケーションであるため、Web APIを提供するデータ基盤製品が増えています。
Web APIに加え、JavaScriptやPythonなどポピュラーな言語に対応したライブラリを含むSDK(Software Development Kit)が利用できれば、開発効率は高まります。
連携インタフェースは、表1のように様々なものが用意されています。Excelなど使い慣れたツールへの入出力機能、データ分析/ダッシュボードのための商用製品やOSS(オープンソースソフトウェア)、ローコード開発ツール、クラウドサービスとの専用コネクターなどです。自社でのデータ活用において、どのような連携インタフェースを用意すべきかは、事前に検討しておくとよいでしょう。
対象ユーザー | カテゴリー | 連携対象 |
---|---|---|
ビジネスユーザー | スプレッドシート | Excel、Google Sheetsなど |
ビジネスインテリジェンス(BI)ツール | Power BI、Tableau、Qlik Senseなど | |
ダッシュボード | Grafanaなど | |
データ分析担当者/データサイエンティスト | 対話型分析ツール | Jupyter、Google Colabなど |
分析クエリエンジン | BigQuery、Databricks、Amazon Redshift/Athenaなど | |
基盤管理者 | ETL、分散処理エンジン | Apache Spark、Google Cloud Dataflow、Azure Data Factory、Informaticaなど |
アプリケーション開発者 | ローコードフレームワーク | Outsystems、PowerAppなど |
SDK、ユーザーインタフェース(UI)ライブラリー | カスタムアプリケーション | |
API | カスタムアプリケーション |
データ基盤が備えるべき要素について、前後編に分けて説明しました。次回は、デジタルツインとAI(人工知能)技術の活用について説明します。
草薙 昭彦(くさなぎ・あきひこ)
Cognite チーフソリューションアーキテクト 兼 CTO JAPAN。1975 年神奈川県生まれ。東京大学大学院工学系研究科電子情報工学専攻修士課程修了。大手外資系IT企業数社を経て、現職。シンガポール在住。近年はデータエンジニアリング、分析および、その表現手法としてのビジュアライゼーション技術に重点を置いている。東京の公共交通3Dマップ「Mini Tokyo 3D」の作者としても知られる。