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デジタルツインに必要なデータ基盤の要件(前編)【第4回】

草薙 昭彦(Cognite チーフソリューションアーキテクト 兼 CTO JAPAN)
2021年5月26日

これまでデジタルツインがもたらす価値と、デジタルツインの構築プロジェクトを進めるための段階的アプローチについて説明してきました。今回と次回は、デジタルツインの実現に必要なITシステムの中核に位置するデータ基盤について前後編に分けて説明します。

 デジタルツインの構築において、その中核に位置するのがデータ基盤です。図1は、そのデータ基盤を非常に簡略化して示したものです。

図1:デジタルツインの中核をなすデータ基盤

 現場の詳細な状況を示すデータは、様々なIoT(Internet of Things:モノのインターネット)デバイスやセンサーを使って収集されます。収集されたデータはネットワークを介してデータ基盤に送られ格納されます。そして、集中管理されたデータは、業務目的に応じた様々なアプリケーションによって利用されます。

 デジタルツインで扱うデータは、企業が従来の業務システムで扱ってきたデータ量と比較するとはるかに大量です。またIoTデバイスから送られてくるデータを低遅延で処理し結果に反映することが求められます。そのためデジタルツインを支えるデータ基盤に求められる技術要件は、汎用的なITシステムとは異なってきます。

 例えば、データを格納するストレージ1つをとっても、データの増大に対して柔軟に拡張でき、性能を線形に高めていける、いわゆるスケーラビリティ(拡張性)を備えた製品が適しています。この点においては、自身で構築・運用するハードウェア製品よりも、クラウド事業者が提供するサービスのほうが、クラウド基盤が備える拡張性などの利点を最大限に活用できるでしょう。

 デジタルツインが処理するデータは、量だけではなく、その種類にも特徴があります。汎用データベースが扱う表形式の構造化データのほかにも、画像や3D(3次元)モデル、データ間の関連性を記述したグラフ構造など、データ形式は多岐に渡ります。これらのデータを管理し活用するためには、柔軟なデータモデルを扱えることがポイントになります。

 そして、データ活用を促進する上で欠かせないのが、明確で使いやすいアクセスインタフェースです。昨今はブラウザで動作するWebアプリケーションが、UI(User Interface:ユーザーインタフェース)を担うソフトウェア開発の主流です。Webアプリケーションの開発効率を高めるために、オープンなWeb API(アプリケーションプログラミングインタフェース)でデータへのアクセスができる製品が望ましいでしょう。

 以下では、こうした要件を持つデータ基盤の種々の機能について、もう少し技術的な観点からみてみましょう。