- Column
- withコロナが求めるDX基盤のための3つの条件
業務効率に貢献する業界の“当たり前”に対応する【条件2】
ポイント2:グループ一体経営を支えられるか?
今日、特に製造業においては、海外売上比率が50%以上を占めるケースや、ホールディングカンパニーとして複数の法人を束ねてビジネスを伸ばすケースが少なくありません。こうした状況にあっては、海外法人を含めたグループ全体で、次のような要件が求められます。
・グループ間で、あたかも1法人のように受発注・在庫を管理できると同時に、各法人の財務管理がしっかりできる(図2)
・各製造拠点において、同じ手順で業務を遂行でき、同じ基準で管理指標を捉えることでグループ全体の成長を促進させられる
・海外法人の要件にも対応するグローバルで活用できる基盤になっている
これらの要件を満たせない、いわゆる単体企業法人をターゲットにした仕組みでは、複数法人にまがたる効率的な生産・調達計画、さらにはグループ全体での原価低減のポイントも見えなくなります(図3)。
当然ですが、海外の法制度や言語に対応しグローバルで活用できることも必須要件です。
ポイント3:ビジネスの成長に追随でき、かつBCPに対応できるか?
業務基盤としては、システムインフラがビジネスの拡大によるデータ量やトランザクション量の増加に効率的に追随できなければなりません。BCP(事業継続計画)の観点からも“止まらない仕組み”が求められます。
こうした要件に迅速に対応するには、オンプレミスの基盤として自社でハードウェアなどの資産を保持し拡張・維持していくことは、コストと時間のうえで絶対的に不利です。クラウドでの運用が1つの解決策になります。
IoTへの対応にも業務基盤が重要に
さらに製造業におけるDXにおいては、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)へ取り組むことが最重要課題に急浮上しています。IoTの良さは、現場で発生しているデータを逐一捉えることで、膨大なデータを業務につなげ業務上の判断を自動化し業務の“超効率化”を図ることにあります。
例えば、生産現場において、センサーから得られる膨大で精緻なデータにより、ある設備の故障を予見し、生産が停止する前に故障個所の部品を発注手配するなどが挙げられます。生産停止によるスループットの低下を未然に防ぎ、ビジネス上の売り上げに貢献するといったことが可能になります。
IoTを経営に活かすにためには、上述した“当たり前”を当たり前に実行できる業務基盤がより重要になってくるのです。
“当たり前”への対応も企業文化の改革が必要
経済産業省が2018年に公開した『DXレポート』から約2年が経った2020年12月、『DXレポート2』が発表されました。情報処理推進機構(IPA)が500社を対象に調査した結果が掲載されています。同調査によれば2020年10月時点で、実に9割以上の企業が「DXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)」レベルか「散発的な実施に留まっている(DX途上企業)」レベルにありました。
DXレポート2は、DXの要として以下を挙げています。
・変化に迅速に適応し続けること。その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することがDXの本質であり、企業の目指すべき方向性
・コロナ禍によって人々の固定観念が変化した今こそ企業文化を変革する機会。ビジネスにおける価値創出の中心は急速にデジタルに移行しており、今すぐ企業文化を変革しビジネスを変革できない企業は、デジタル競争の敗者に
コロナ禍というビジネス環境の劇的な変化を強いられ、ビジネスのデジタル化を促進する機運が高まっています。上述した「業界の当たり前は当たり前に」こなすことは、「これまで自社では、こういうやり方をしてきたのだから、こうでなければならない」という固定観念を変革することでもあります。これも企業文化の改革の1つです。
そこで大事なことは、ビジネスの目標あるいは成果を見据えることです。従ってトップが率先し、企業文化の変革を推進していくべきでしょう。
次回は、DX基盤に求められる第3の条件として、企業ビジネスの動脈であるサプライチェーンのDX変革について考えます。
佐藤 幸樹(さとう・こうき)
インフォアジャパン ソリューションコンサルティング本部 プリンシパルソリューションアーキテクト。1985年生産系システム開発、インドネシアで事業会社の立ち上げを経て、1998年ERP(統合基幹業務システム)の世界に入る。以後は一貫して製造業の業務改善に向けた最適ソリューションの導入・提案を多数経験している。