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  • 製造業がソフトウェアで収益化を図るための3つの条件

サービスのライセンス方式を検討する【条件2】

前田 利幸(タレスDIS CPLジャパン ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 ビジネス開発部 部長)
2021年6月16日

 ソフトウェアの利用状況をクラウドに収集すれば顧客の利用動向を把握することもできる(図2)。これを分析することで、既存顧客に別の機能を提供して顧客単価を上げる「アップセル」や、新しい製品を追加導入する「クロスセル」につなげられる。

図2:ソフトウェアの利用状況を分析し“次の一手”を打つ

 コロナ禍で非対面・非接触の企業活動が広がる中、製品の利用状況をソフトウェアで収集することは新たなビジネスチャンスにつながる。利用している機能や利用時間、利用頻度などを分析し、現在のライセンス方式が適しているかどうかを検討することで、アップセルやクロスセルの可能性を判断できる。グローバル展開している企業など、物理的に会うことが難しい顧客であっても、状況を把握してリアルタイムにアクションを起こせるようになる。

顧客満足度を高め続ける取り組みが重要に

 サービスを提供する側として重要視すべきは、当然ながら顧客満足度の向上だ(図3)。顧客の利用状況を分析し、顧客が必要とする最も適切な機能をベースに料金体系を提案できれば、顧客自らが選択したプランでの契約を実現できる。機能追加などを顧客が利用したいタイミングに利用可能にしたり、アップグレードやソフトウェアの更新などをスムーズに実現したりすることも顧客満足度の向上につながるだろう。

図3:顧客満足度を高めるためのソフトウェア提供方法の考慮点

 サブスクリプション方式は、分割払いやリース契約と同じようなものだと誤解されやすい。だがサブスクリプション方式の本来の価値は、ソフトウェアの利用を通して得られる“体験”という価値への対価として顧客が料金を支払う点にある。

 時間の経過とともに変化し続ける顧客のニーズを捕らえ、利用を継続してもらえるように、ソフトウェアを提供する企業は顧客満足度を常に高めていくことが重要だ。ソフトウェアのサービス提供というビジネスモデルへの転換は、顧客との関係性を大きく変え、長期的な収益基盤の構築を可能にする。

 収益基盤の根底には高い顧客満足度があり、その鍵となるのが顧客の状況に応じた柔軟なサービスの提供である。その際、サービス提供の基盤として検討すべきは、ソフトウェアのライセンスをどう管理するかである。次回は、ライセンス管理の仕組みとポイントについて解説する。

前田 利幸(まえだ・としゆき)

タレスDIS CPLジャパン ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 ビジネス開発部 部長。ソフトウェアビジネスに取り組む企業に対し、マネタイズを実現するためのコンサルティングやトレーニング、ソリューション提案を実施。業界紙やWebメディアに寄稿するとともに、全国各地で収益化に関するセミナーや講演活動を展開している。IoT関連企業でシニアコンサルタントを経て現職。同志社大学大学院ビジネス研究科修了(MBA)