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- 法律家が答える電子契約を活用するための3つのポイント
電子契約導入に関連する法律を押さえる【ポイント2】
帳簿書類の電子化を定めた電子帳簿保存法
企業は、決算書類などの会計帳簿と、それに伴う契約書や領収書などの証憑書類を7~10年間保管しておくことが義務付けられています。従来は、これらの帳簿書類は、紙での保存が基本でしたが、1998年に電子帳簿保存法が施行され、電子データでの保存が認められました。
電子帳簿保存法は、1998年の施行以来、何度も改正されています。現在はスキャナ保存も一定の要件のもと認められています。紙の帳簿書類の保管はコストがかかるため、電子化によるコスト削減が期待され、電子を指向する企業が増えています。
電子帳簿保存法では電子データで保存する場合の要件として、電子ファイルの改ざんがされていないことを保証するための仕組みを用意することを挙げています。その方法には大きく、(1)タイムスタンプと(2)社内規定の整備の2つがあります。
タイムスタンプは、ある時刻に、その電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明するための技術です。帳簿書類は長く保存されるものですし、税務調査ではさかのぼって調べることがあるので、書類が作成された日時、作成後に改ざんがないことは、とても重要な要件です。
タイムスタンプの仕組みは様々なベンダーが提供しています。それらを活用すればよいでしょう。なお、2021年度の税制改正(2022年1月施行)により、スキャナ保存に関するタイムスタンプ要件が緩和されました。
一方の社内規定の整備は、会計帳簿の電子データのファイルの編集・修正・削除など、保存時からの改ざんを禁止することを社内規定に明示し、それをチェックできるように運用することです。
普段から、見積もりや注文書などをメールでやり取りしている企業も多いと思います。そうした書類についても改ざんしないように社内ルールを設けておく必要があります。自社の規定についてこれを機会に見直してみてください。
電子データによる交付・手続きを認めるIT書面一括法
電子データによる交付・手続きも認めたIT書面一括法ですが、これまで一般定期借地契約の特約や定期建物賃貸借契約、宅建業法上の重要事項説明書の交付は、引き続き書面によらなければならないとしてきました。
しかし2021年5月、これらの電子化も認める改正法が制定されまた。施行日は未定ですが、さらなる電子化が進みそうです。
契約相手との事前の同意が重要
電子契約に関連する主な法律について、そのポイントを解説しました。ただ法律は改正も多く複雑なため、電子契約を進めるにあたっては法務担当者などに確認しながら、何をリスクとするのかを検討するとよいでしょう。
また基本的なことですが、契約書の電子化においては、契約相手とあらかじめ同意しておくことです。契約相手が電子契約に対応していない場合は、書類での処理になります。デジタル署名で特定の認証局で発行された電子証明書が必要な場合は、あらかじめその旨を説明し用意してもらうように交渉しておきましょう。
次回は、最新の電子契約事情を紹介します。
浅井 孝夫(あさい・たかお)
アドビ 法務・政府渉外本部 本部長。2000年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程卒業。2001年弁護士登録後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所勤務。2007年韓国最大手の金・張法律事務所に勤務。2008年米カリフォルニア州立大学バークレー校ロースクール(LL.M)卒業後、米ニューヨーク州にて弁護士登録。2009年北京滞在を経て法律事務所に復帰。2011年アドビ システムズ(現アドビ)に入社。