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  • 顧客接点を支えるAIコンタクトセンターの基礎知識

コンタクトセンターが抱える課題とAI技術への期待

齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)
2021年10月28日

利用が進むテキスト・自然言語処理技術と音声認識・感情解析技術

 これらコンタクトセンターの課題を解消するうえで、AI技術はどう役立つのでしょうか。AIコンタクトセンターに導入が進みつつあるAI技術は主に(1)テキスト解析・自然言語処理技術と、(2)音声認識技術の2つです。

 いずれも技術分野としては決して新しくはありません。ですが昨今の機械学習(Machine Learning:ML)/深層学習(Deep Learning:DL)の技術が大きく進歩したことで、従来のルールベースによる処理と比べ、より高い精度で、より実態に即した利用が可能になってきています精度が高い回答を素早く返せるようになってきています。

 特に、深層学習の特徴であるパターン認識技術や分類技術は、音声だけでなく、感情などの解析にも活用され始めています。

テキスト解析・自然言語処理技術

 実装例は、AIチャットボットやFAQツール、有人チャットボットなどです。

 AIチャッボットは、顧客からのチャットによる問い合わせに、対話ロボットが自動的に適切な回答を返信する仕組みです。オペレーターによる電話対応が不要になるため、業務負荷の大幅な軽減につながります。適切な回答を対話形式でスピーディーに提供することで、顧客満足度の向上にもつながります。

 AIチャットボットはロボットが対応することで業務を軽減するのに対し、FAQツールや有人チャットツールは、オペレーターの対応業務を支援する形で業務効率を高めます。主に人手不足や対応品質のばらつきといった課題を解消するものです。

 例えばFAQツールでは、オペレーターの端末上にFAQとキーワード入力フォームを表示することで、キーワードの入力やFAQのクリックによって適切な質問にすばやく辿りつけるようにします。有人チャットボットでは、顧客が入力したメッセージから回答候補を自動で絞り込みます。AI技術を用いることで、候補の絞り込み精度が高まります。

音声認識技術

 実装例としては、IVR(自動応答)システムへの組み込み、通話内容のテキスト化、顧客の感情分析などがあります。

 従来のIVRは、プッシュボタンによる番号入力によって適切な部署に振り分けるなどを自動化してきました。これに対しAI技術を組み込んだIVRでは、音声による回答から適切な部署に振り分けたり、その場で回答を返したりができます。スマートスピーカーのように、仮想エージェントがオペレーターとして振る舞い、問い合わせに対応します。

 通話内容のテキスト化では、音声をリアルタイムにテキスト化することで、顧客対応ログを記録したり、FAQツールと連携し質問への回答を自動で抽出したりが可能になります。

 感情分析では、通話中の声音や抑揚を解析することで、顧客の感情を把握できるようにします。オペレーターの対応品質を高めるだけでなく、感情的になっている顧客を検知しアラートを上げることで、上長が素早くサポートできるようにもなります。

データ分析で顧客満足度の向上や売上拡大につなげる

 音声認識による音声(アナログデータ)のテキスト化(デジタルデータ)は、コンタクトセンター領域でのデータ分析の可能性を大きく広げます。その1つが将来の予測です。

 過去の通話データを機械学習・深層学習技術を使って分析することで、顧客との対話パターンから、顧客が取ろうとしている行動が予測可能になります。解約を言い出そうとしているのか、あるいはワンランク上の製品/サービスを本当はほしいと思っているのかなどが分かれば、適切なタイミングでプロモーション施策を提案したり、躊躇している顧客の背中を押したりが、可能になります。

 さらに、人間では判断できない能力やインサイトの発見につながる可能性もあります。例えば、対応履歴や過去の実績から、オペレーターの隠れた能力までも把握し、最適な人材配置を実施したり、対応履歴から顧客に対して従来とは異なる提案をしたりが考えられます。

 こうした仕組みは、コンタクトセンターシステムに組み込まれるだけでなく、CRMシステムなどと連携することで実現しようとする動きが始まっています。

 またAIチャットボットなどでは今後、画像や映像の解析技術の必要性も高まるかもしれません。チャット画面でアップロードされた画像から対象製品を検索したり、あるいはコンタクトセンター内の様子を映した映像から人員配置の最適化や異常検知に活用したりなどが考えられています。

 コンタクトセンターへのAI技術の適用は、人手不足や対応品質のばらつき、売上拡大への貢献といった課題の解決を容易にします。既に日本でも少なくない企業がAI技術活用の成果を上げています。AI技術の研究開発は日々進められているだけに、AIコンタクトセンターの姿は今後も変化し続けていくことでしょう。