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  • 顧客接点を支えるAIコンタクトセンターの基礎知識

コンタクトセンターが抱える課題とAI技術への期待

齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)
2021年10月28日

コロナ禍でコンタクトセンターによる新たなCX(Custmer Experience:顧客体験)の創出への期待が高まっています。一方で、オペレーター不足やスキルの属人化、リモートワークなど解決しなければならない課題も少なくありません。種々の課題を解決しながら新たなCXの実現を両立させるためにAI(人工知能)技術の活用が進んでいます。

 コンタクトセンターの様々な業務にAI(人口知能)技術を適用し、顧客体験や対応品質の向上、業務効率の改善、さらには売り上げの拡大などを目指す取り組みが活発化しています。

 AI技術のコンタクトセンターへの適用例として、まず思い浮かぶのがAIチャットボットではないでしょうか。実際、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応に伴う給付金の問い合わせ業務にAIチャットボットを導入し、対応職員の業務負荷を減らしながら行政サービスの素早い提供に役立てた自治体がありました。

 EC(電子商取引)分野では早期から、FAQ(良くある質問と答)など、必ずしも人間が対応しなくてもよい問い合わせ業務などにAIチャットボットが積極的に採用され、顧客満足度を高めたり、コンバーション率を高めたりしている例は少なくありません。

 このようなAIチャットボットを筆頭に、コンタクトセンターにAI技術を活用することは、新たな「AIコンタクトセンター」を構築・運営できると期待されているのです。

コンタクトセンターが抱える3つの課題

 AIコンタクトセンターへの期待が高まっている背景には、現状のコンタクトセンターが抱える課題があります。その課題は大きく(1)人手不足、(2)対応品質のばらつき、(3)売上拡大への貢献の3つに整理できます。

課題1:人手不足

 一般にコンタクトセンターは人材の流動性が高く、離職率は30%割程度とされています。新規に採用したスタッフの3割が1年以内に辞めていくため、人材の確保と確保した人材の育成が重要になります。

 人材が確保できないことを見越して、少ないスタッフで業務を効率良く運営したり、在宅勤務などを活用して柔軟に人材を確保したりと、人手に頼らずに顧客の声を吸い上げ業務に活用できる仕組みを構築する必要があります。

課題2:対応品質のばらつき

 コンタクトセンター業務の中心は、チャットなどのチャネルが増えたとはいえ、電話対応です。顧客の満足度は、担当したオペレーターの対応内容に左右されます。担当者が持つ知識やノウハウはもちろん、言葉の選び方や問いかけ方、声質、抑揚などの微妙な違いによって顧客が受ける印象は変わるためです。

 こうした知識やノウハウは属人化しやすく、チームや組織いおいて、いかに標準化を図り、ばらつきをなくすか、そして、その優れたノウハウをいかに共有し活用できるかが重要になります。

課題3:売上拡大への貢献

 コンタクトセンターは現在、重要な顧客接点の1つに位置づけられています。問い合わせ対応やサポート業務だけでなく、音声を中心したコミュニケーションによって、顧客満足度の向上や新たな顧客獲得に向けた“最初の窓口”としての役割が期待されています。

 その期待に応えるためには、応答率や放棄率、応答速度、平均通話時間といった従来からの指標や方法論に加え、CRM(顧客関係管理)システムなどと連携したデータ解析や、通話内容のリアルタイム解析、顧客に合った製品/サービスの適切な提案などにも対応できる必要があります。