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- AI活用に取り組む企業のためのプラットフォーム
エッジコンピューティングのためのプラットフォームを構築する【条件3】
エッジコンピューティングの上位5つのメリット
エッジコンピューティングが自社での利用に適しているかどうかが分かったところで、その具体的なメリットの上位5つについて、導入時に考慮すべき点を挙げながら説明する(図1)。
メリット1:遅延の低減
エッジコンピューティングの分散型インフラストラクチャーは、データを収集する場所にコンピューティング能力を置くことで、遅延の主な原因を軽減する。データをデータセンターやクラウドに送る時間を削減でき、データをリアルタイムに処理する。
例えば、IoT機器に組み込まれたインテリジェントセンサーは、自律走行マシンや工場内のカメラからのデータを処理し、異常や故障などを即座に作業員に知らせる。組み込み機器以外では、店舗や病院、倉庫のサーバールームやクローゼットなど、センサーに近い場所にエッジコンピューティングのためのサーバーを設置することで、遅延を低減する方法もある。
データを、その発生場所で把握できれば、企業は様々な効果を得られる。オペレーションの最適化や、製造ラインでの安全性向上、疾病診断の迅速化、迅速なサービスによる顧客体験の向上などだ。
現行のインフラ環境において、製品/サービスに必要なリアルタイムかつ低遅延の推論や分析ができない場合、エッジコンピューティングの導入は理想的な選択肢になるだろう。
メリット2:スケーラビリティ
エッジコンピューティングはインフラの拡張にも理想的な方法だ。集中型のクラウドシステムでは、情報の移動と処理のための帯域幅が制限される。ネットワーク利用料やクラウドストレージ利用料などによるコストの上昇や、インターネットアクセスが必要なことによる対象範囲の縮小を招くだろう。
エッジコンピューティングでは、データの収集と処理がローカルネットワーク上で実行されるため、帯域幅はLAN(ローカルエリアネットワーク)に関連付けられ、より幅広いスケーラビリティを持つことになる。処理をLAN上で実行することで、クラウドとの間でデータをやり取りする必要がなく、コスト削減効果も大きくなる。
メリット3:リモート管理
エッジコンピューティングにおける困難な側面の1つに、遠隔地にある数台または数百台のシステムのセットアップや保守がある。そのために、熟練したデータセンター技術者を確保しなければならない。コストと時間のかかる、このプロセスを回避するためには、エッジコンピューティングのためのプラットフォームにおいて、その導入と管理が容易でなければならない。
それでも、遠隔地に置かれたシステムに対するソフトウェアのインストールとアップデートの問題が残る。この問題を解決するには、システム管理者やIT担当者が、エッジコンピューティング環境全体を対象に、実行するアプリケーションを1カ所から簡単に導入・管理・拡張ができるプラットフォームを採用する必要がある。
特にエッジコンピューティングを複数のサイトに大規模に展開しようとしている場合は、リモート管理のためのプラットフォームを強く検討する必要がある。多くのプラットフォームは開発者による構築と保守が必要だが、中には数分でセットアップを完了できるソリューションもある。
メリット4:セキュリティ
エッジによる分散コンピューティングの課題としてすぐに思い浮かぶのが、セキュリティとデータプライバシーだろう。各エッジサイトにあるローカルデータと、信頼性の高いインサイトを得るために学習させたAIモデルを確実に保護することが最も重要になる。
しかし、多くのエッジコンピューティングのためのプラットフォームの多くは、セキュリティの責任を利用者に押し付けているのが実状だ。特注のソリューションを作成できる大規模なセキュリティチームがあれば、セキュリティ機能がほとんどないプラットフォームを選択することもできる。だがセキュリティの専門家がいなければ、セキュリティモデルを一から構築するのは困難だ。