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  • AI活用に取り組む企業のためのプラットフォーム

エッジコンピューティングのためのプラットフォームを構築する【条件3】

Chris To(NVIDIA ソリューションアーキテクチャー & エンジニアリング マネジャー)
2022年4月21日

第1回で、AI(人工知能)プロジェクトの確実な推進に必要なAIインフラについて考察し、第2回では、データサイエンティストやAIエンジニアという利用者の生産性を高められるAIプラットフォームの必要性を提言する。今回は、データが収集される場所に計算能力をもたらす手段として急成長しているエッジコンピューティングについて考えてみる。

 小売店や病院、工場などに設置された数十億個のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサーは、膨大な量のデータを生成し、ビジネスを大きく変える可能性を秘めている。そこでは、データを収集する場所と処理する場所との距離を縮めることで、企業はリアルタイムにインサイト(洞察)を得、それに素早く反応することで、IoTデータが持つ可能性を解き放たれるだろう。それを実現する仕組みがエッジコンピューティングである。

 エッジコンピューティングには事実上すべての産業が、AI(人工知能)ワークロードを加速させるために投資している。米調査会社のIDCは、『2020 Edge Spending Guide』において、今後4年間で、エッジコンピューティングのためのハードウェアとソフトウェア、サービスに対する企業の支出は年間複合成長率12.5%で増加し、2024年までに推定2500億ドルに達すると予想する。

エッジコンピューティングは自社ニーズに適しているのか?

 しかし、エッジコンピューティングに投資する前に、企業はエッジコンピューティングが自社のニーズに適しているかどうかを評価する必要がある。

 エッジコンピューティングが自社組織に適しているかどうかを判断する最初のステップは、「ユースケースがエッジユースケースであるかどうかを特定する」ことだ。そのためには、次の2つの質問に答えるのが一番よいだろう。

質問1:必要とするシステムは「常時稼働」しているか?

 常時稼働するシステムとは、センサーやその他のインフラストラクチャーが常に動作し、その環境を監視しているものを指す。一例としては、コンピュータビジョン(損失防止向けセキュリティカメラなど)や、医用画像処理(ER:救急救命での手術支援)、数百または数千のモデルを学習するジョブ(ハイパーパラメータ最適化)、数週間にわたる大規模なモデルトレーニングやシミュレーションワークフローなどが挙げられる。

 逆に常時稼働していないシステムの例には、小規模な単発のシミュレーションやモデルトレーニングのジョブなどがある。

質問2:必要とするシステムは、センサーデータに対して推論を行うか?

 推論とは、センサーが収集したデータを、AI技術を使って解析し意味を理解したり、それに基づいて意思決定をしたりすることだ。例えば、自律動作マシンの障害物検知、スマート小売店の物体分類、スマート病院支援のための対話型AIシステムなどが挙げられる。

 これら2つの質問に対する答えが「はい」であれば、エッジコンピューティングのメリットを享受できる可能性が高いと言えるだろう。