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  • 顧客価値を高めるためのデータ活用とCDP

改正個人情報保護法などへの対応には“組織の仕組み”が不可欠【第2回】

小川 裕史(サイトコア ソリューションコンサルタント)
2022年5月12日

運用しながらデータの精度を高めていくCDP

 DMPの課題に対し、最近注目されているのが顧客プロファイルを基軸にしたデータプラットフォーム「CDP(Customer Data Platform)」である。顧客プロファイルを元に全社でデータ活用するための仕組みを作るための基盤になる。

 CDPの特徴は、1人ひとりの顧客プロファイルを軸に、その精度を高めるために様々なデータを紐付けていくことだ(図1)。営業やマーケティングのためだけでなく、デジタルチャネルでの展開やパーソナライズを前提にしている点もポイントになる。

図1 顧客プロファイルを中核とするCDP(Customer Data Platform)のイメージ

 顧客プロファイルといっても、始めからデータが充実している必要はない。例えば、あなたが旅行予約のWebビジネスを立ち上げたばかりでも、CDPを使えば顧客プロファイルを作成できる。最初は、「いつ、どのIPから自社サイトに訪問してきた人か」というクッキー情報だけで十分だ。

 それが2回、3回とアクセスが重なれば、訪問頻度の高い時間帯や、どんな情報に興味を持つ人かが見えてくる。そうすれば、「北海道に興味があるようだから、より詳しい北海道のグルメ情報もお勧めしよう」などと、それまでに蓄積してきた顧客プロファイルをパーソナライズに生かせるようになる。

 そこで提示した情報に好感が持たれ、その利用者が自社サイトに会員登録してくれれば、その顧客プロファイルに属性情報が加わり、初めて人格が備わってくる。つまり、より精度が高くなるわけだ。

 接客はWebだけではない。顧客プロファイルがさらに成長していけば、インサイドセールスが電話を掛けても良い。その際、顧客プロファイルに紐付けた購入履歴や予約履歴、興味関心の傾向がわかれば、その特性に合わせたお勧めの提案や適切なオファーが出せるようになる。

 逆にトラブル発生時にはコンタクトセンターに問い合わせが来たりすることもある。そこでも、顧客プロファイルと関連履歴などから、損失補填だけでなく、よりエンゲージメントを高めるような提案が可能になる。

 例えば旅行先で、依頼した荷物が配送されないというトラブルであれば、保険で損失をカバーしたうえで「次回の配送料は無料にする」といったようなオファーをしてもいいだろう。もう少しで会員ランクが上がりそうな時には、その案内をするなど、その顧客の状態に応じて臨機応変に様々な施策が考えられる。

CDPではDMPへの投資を有効活用できる

 様々な施策の成果を、さらに顧客プロファイルに紐付けていくことで、どんなサービスや提案が好まれやすいのかの傾向が見えてくる。そのデータを活用すれば、新規事業のアイデアや企画が生まれる可能性も高くなる。

 そこからさらに、経営層が新規分野に積極的に投資したり、パートナーを拡大したりすれば、事業の成長スピードも加速していく。CDPを活用すればするほど、その精度は高まり、新たな成長やDXの推進につながる。

 こうした成長イメージが描ければ、データ活用やDX推進の組織的な“壁”は破れる。大切なのは、顧客プロファイルという軸を立て、それにあらゆるデータを紐付けることだ。CDPは顧客プロファイルを中心にしているため、パーソナライズのためのエンジンにも適用しやすい。

 組織でデータを活用し、精度を高めていく仕組みができれば、データ活用やDXの推進へと一段と近づく。次回は、実際にデータ活用に踏み出すための準備について紹介する。

小川 裕史(おがわ・ひろし)

サイトコア ソリューションコンサルタント。2009年オムニチュア(現アドビ)入社。以来、複数企業でSaaS型デジタルマーケティングソリューションに特化したコンサルタント/プリセールスとして12年間従事。日本ヒューレットパッカードでは、パーソナライズ・A/Bテスソリューション「Optimost」の日本市場での立ち上げ業務を担当し、多くの企業への導入を手掛けた。2021年8月サイトコア入社。同社事業の新しい柱である「DXPソリューション」ビジネスの日本での拡大に向け様々な業務を担当している。