- Column
- 医療と健康を支えるデジタル活用の最前線
患者と医療従事者をPHRの活用でつなぐスマホアプリを“情備薬”に
「メディカルDX・ヘルステックフォーラム 2022」より、サワイグループホールディングスの竹田 幸司 氏
ジェネリック医薬品を手掛ける沢井製薬を中核とするサワイグループホールディングスが個人の健康情報の記録「PHR(Personal Health Record)」の活用に力を入れている。2021年10月にはスマートフォン用アプリケーション「SaluDi」をリリースした。同社のグループIT部長の竹田 幸司 氏が、2022年8月27日に開催された「メディカルDX・ヘルステックフォーラム2022」(主催:メディカルDX・ヘルステックフォーラム実行委員会)に登壇し、SaluDiを含めたデータ活用への将来展望を語った。
「当社の『SaluDi』は個人の健康管理や生活習慣病の予防や治療を総合的にサポートするためのスマートフォン用アプリケーションです。患者さんなどの利用者と医療従事者、企業・健康保険組合、自治体など、種々のステークホルダーとの連携促進を目指しています」−−。サワイグループホールディングスのグループIT部長の竹田 幸司 氏は、2021年10月にリリースしたPHR管理のスマートフォン用アプリケーション「SaluDi」を、こう説明する(写真1)。
SaluDiは、血圧や歩数などのデータを記録することで日々の健康状態を可視化するためのスマホアプリだ。手動でのデータ入力のほか、種々の医療関連計測機器との連携もできる。利用者は、記録したデータを自らの意思で医療機関と共有しておけば、通院時に血圧手帳や疾患別手帳を持参する必要がなくなる。基本機能の利用は無料で、健康維持・増進のための情報を得られるほか、オンライン診察や服薬指導を通して医療機関とつながれる。医師の側も、よりスムーズな診療が可能になると期待する。
SaluDiをリリースした理由を竹田氏は、こう説明する。
「グループの中核企業である沢井製薬はジェネリック医薬品として治療薬を提供しています。ですが、それだけにとどまらず、未病・予防の面でも医療に貢献したいと考えています。SaluDiは「情報を備えた常備薬」という意味の造語である『情備薬』として、患者さんと医師に加え、薬剤師、企業・健康保険組合、自治体などさまざまな関係者をつなぐ“架け橋”にしたいとの想いから開発しました」
診療がスムーズになり、患者自身の診療に対する姿勢も変化
SaluDiでは、利用者が許可した各種データについては医療従事者もクラウド上で共有できる。患者が日々、計測したバイタルデータや服薬状況を確認することで、最適な診療を提供したり、診察時以外にもチャットでフォローしたりが可能になる。外部システムとのデータ連携により、疾病リスクの予測や健診データの自動取り込みもできる(図1)。
竹田氏は、SaluDiの導入事例として兵庫県のかんだ内科クリニックを紹介する。「同クリニックでは2022年6月時点で110人を超える患者さんがSaluDiを治療の補助に利用されている。院長先生からは『非常に診療がスムーズになる』『患者さんが診療に対し、より主体性が増している印象がある』との評価をいただいています」(同)という。
外部システム連携で健康〜未病〜特定保険指導〜受診勧奨に対応
今後のSaluDiについて竹田氏は、「現バージョンをステップ1とすれば、次のステップ2では健康から未病、特定保険指導、受診勧奨までの各段階に対するサービスをワンストップで提供し、健康づくりを支援できるアプリに育てていきます。食事や睡眠など、さまざまな領域で各社と連携し、生活習慣病以外にも対応できるアプリにしたいと考えています」と述べる。
ワンストップサービスは、医薬・ヘルスケアプラットフォーム(日立システムズ製)を使って外部システムと連携して実現する(図2)。例えば、行動変容促進では、メタボリックシンドローム関連疾患のリスク削減を目的とした行動変容アプリケーション「MIRAMED」(東京大学センター・オブ・イノベーション[COI]製)と連携。受診勧奨では、オンライン診療システム(インテグリティヘルスケア製)と連携する。
竹田氏は、「当社だけで、すべての機能を作り込むのは非現実的です。いろいろなアプリケーションと連携し、SaluDiをより充実したものにしていきたいと考えています。『情備薬』としてSaluDiを活用していただき、患者さんや医療従事者、企業の従業員や自治体の住民、そして日本国民全体のQoL(生活の質)の向上に貢献していきたいと思います」と力を込める。