- Column
- 医療と健康を支えるデジタル活用の最前線
オンライン診療を起爆剤に産官学が連携する医療DXが進む
「メディカルDX・ヘルステックフォーラム 2022」より、医療法人社団DEN 理事長の宮田 俊男 氏
期待されながら、なかなか広がらなかったオンライン診療が、コロナ禍で再び注目を集めている。地域包括ケアに取り組む医療法人社団DEN 理事長で早稲田大学理工学術院 教授でもある宮田 俊男 氏が、2022年8月27日に開催された「メディカルDX・ヘルステックフォーラム 2022」(主催:メディカルDX・ヘルステックフォーラム実行委員会)に登壇し、臨床現場におけるオンライン診療の現状や課題、最新情勢や今後について解説した。
医療・健康分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の1つに、コロナ禍で注目されたオンライン診療がある。従来、オンライン診療の対象は症状が安定した再診患者に限定されてきた。それがコロナ禍で、初診患者にも対象が拡がり、2022年にはオンライン診療の報酬点数も改善された。オンラインでの服薬指導の規制も見直された。オンライン診療に対し、医療法人社団DENの理事長で早稲田大学理工学術院 教授でもある宮田 俊男 氏は、こう語る。
「医療DXに対し国は、コロナ以前から2040年を展望した政策を展開してきました。医師の働き方改革や、地域での医師の偏在や不足、総合診療医の養成などに取り組んでいますが、実際はあまり進展していません。オンライン診療は今、一大変革期を迎えており、これらの課題解決を担うことが期待されています」
宮田氏はもともと、早稲田大学理工学部で人工心臓の研究開発に携わっていた。だが人工心臓の実用化に課題を感じたことから、医師に転じ、医学での博士号も取得した。臨床現場で働いた後、厚生労働省の医系技官になったものの、かかりつけ医やセルフメディケーション、医療DXの進展に課題を感じていた。そこで医療法人社団DEN みいクリニック代々木を立ち上げ、地域包括ケアシステムの構築を実践。コロナ禍でのオンライン診療をいち早く開始した。
セルフケアの実戦には企業や医療機関、自治体の連携が必要
オンライン診療を実践するためのポイントとして宮田氏は、「セルフメディケーションとセルフケア」を挙げる。セルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち軽度な身体の不調は自分で手当てすること。セルフケアは、健康を確立・維持して病気を予防するとともに、その対処に自ら行動を起こすことで、セルフメディケーションも含む。
「大切なのは患者自身によるセルフケアです。バイタルデータを自ら管理したり、管理栄養士と連携して栄養補助食品を取り入れながら在宅医療における栄養管理を円滑にしたりします。患者の生活を見ることで、的確な服薬指導や健康管理も可能になります」(宮田氏)
健康管理により、がんになるリスクも低減できるとする。そのため必要な、食生活を見直す、適正体重を維持する、身体を動かすなどの健康習慣の実践には「各機関が連携し、30〜40代の未病状態からアプローチしていくことが重要になります」と宮田氏は指摘する。
経済界や医療関係団体、自治体のリーダーが連携して設立した「日本健康会議」が2015年、「健康なまち・職場づくり宣言2020』を発表。2022年には「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」を取りまとめている(図1)。そのうち宣言5では、デジタル技術を活用した生涯を通じた新しい予防・健康づくりへの取り組む保険者や医療機関などの目標数も掲げた。
宮田氏も神奈川県と連携し、「ヘルスケア・ニューフロンティア構想』に携わっている。科学技術・産業・保健医療を対象にした政策を融合した横断的組織で、最先端医療や最新技術の追求、および未病の改善に取り組んでいる。