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  • 目指すべきDXの実現に向けた内製化のススメ

DXがシステム内製化を求める理由と実施策

齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)
2023年3月24日

内製化で知見やノウハウの獲得、人材育成も可能に

 では、内製化によって、どのような変化が生まれ、どんなメリットを享受できるのでしょうか。

 内製化のメリットとしては、(1)変化対応力と業務のスピードアップ、(2)コストの最適化、(3)知見やノウハウの獲得と人材の育成などが挙げられます。これらは、ウォーターフォール型での外注・アウトソーシングの課題やデメリットだとも言えます。

変化対応力と業務のスピードアップ

 DXに向けたシステム開発では、従来のような効率や品質よりも環境、すなわち市場や顧客ニーズの変化への対応力が、より強く求められます。例えば、消費者向けのサービスサイトやEC(電子商取引)サイト、スマートフォン用アプリケーションなどの開発では、消費者ニーズに合わせた機能を俊敏に追加・改善できることが重要になります。
 社内の業務システムや企業間取引システムなどでも、業務プロセスの多くがデジタル化されたことで、社内や取引先が求める機能を柔軟に変更していく必要があります。

コストの最適化

 環境変化に素早く対応するためのトライ&エラーからシステム改修までの工数や人員を最適化し、投資効果を高められます。
 従来の外部委託で環境変化に素早く対応しようとすると、外注・アウトソーシングにかかるコストが増加してしまいます。例えば、AI(人工知能)技術をビジネスに適用する場合、AIモデルを必要に応じて再作成していかねばなりません。ですが、AIモデルの開発を外部に委託していると、モデルを再作成するたびに開発コストが発生します。

知見やノウハウの獲得と人材の育成

 開発を外部に依存してしまうと、本来自社に蓄積すべき知見やノウハウの獲得が難しくなります。OJT(On the Job Training)のようなかたちで経験を積めないからです。人材育成も難しくなります。外部に依存し、アプリケーション開発やインフラ管理の知識を全く持てなくなってしまえば、システムの企画や設計、要件定義を担うこと自体が困難になっていきます。

 では、内製化をどのように進めれば良いのでしょうか。

 まず注意したいのは、これまで外部に委託してきた業務を単純に社内に移転するだけでは意味がないということです。外部委託によって効率化できていた業務が非効率化し、変化への対応力を落としたりコスト高を招いてしまったりするリスクもあります。

 重要なのは、内製化をDXの取り組みにおける施策の1つだととらえ、DXで利用される方法論やアプローチを活用することです。というのもDXは、ビジネス変革を伴う取り組みであり、意識改革(マインドチャンジ)やチームビルディング、システム開発・運用、クラウド活用など、さまざまな方法論やベストプラクティス、フレームワークの活用を求めるからです。

 DXへの取り組みのなかで内製化を進めることで、内製化で課題になりやすいコストや適用領域、期間、スキル・人材の獲得、ベンダーとの責任分担、契約方法の見直しなどを効率的に進められるようになります。

 先に紹介した『DX白書2023』は、DXで求められる機能や、利用される手法や開発技術を網羅的に解説しています。内製化への取り組みの参考になるはずです。

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