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  • 目指すべきDXの実現に向けた内製化のススメ

DXがシステム内製化を求める理由と実施策

齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)
2023年3月24日

内製化が求める機能と手法と開発技術

 まず、ビジネスニーズへの対応で重要になるシステム機能として、スピード・アジリティ、社会最適、データ利活用の3つのテーマを挙げています。

 システム開発プロセスおよび手法としては「デザイン思考」「アジャイル開発」「DevOps(開発と運用の融合)の3つを挙げます(図2)。そのうえでDevOpsにも関連する「ノーコード/ローコードツール」を加えた4つを解説しています。

図2:DXのためのシステム開発プロセスおよび手法(『DX白書2023』、IPA、202年2月、P.248)

 システム開発技術としては、クラウド、コンテナ、マイクロサービスアーキテクチャー/API(アプリケーションプログラミングインタフェース)、レガシーシステム刷新の4つを取り上げています。

 これらのシステム機能や開発技術については、アンケートにおける日米比較や経年比較として、求められる機能の重要度や達成度を探っており、内製化に取り組む際の優先度を判断する尺度にもなるでしょう(図3)。

図3:ビジネスニーズに対応するためのシステム機能の重要度(『DX白書2023』、IPA、202年2月、P.269)

 例えば、「変化に応じ迅速かつ安全にITシステムを更新できる」「小さなサービスから始め、価値を確かめながら拡張していくことができる」といった項目が挙げられています。開発手法・技術の習得に向けては、多くの解説書が提供されていますし、社内のIT部門にも有識者は少なくないはずです。

伴走型の支援サービスや準委任契約などの活用も

 DXが求め、メリットも大きい内製化ですが、これまで外部に委託してきた業務のすべてを社内に取り戻そうとしても、エンジニアの確保など人事制度上、困難な課題は少なくありません。データサイエンティストやAIエンジニアなどを一般社員とは異なる制度枠で採用する動きもありますが、どの企業でも取り組めることでもありません。

 日本企業が内製化に取り組む上では、自社単独での実現ではなく、システム子会社やシステムインテグレーター、スタートアップ企業などとの関係性を見直しながら、新しいパートナー関係を築いていくことが現実的でしょう。『DX白書2021』は、こう指摘しています。

 「内製化する過程で必要となるアジャイル開発の考え方や、クラウドネイティブな開発技術などについて、ユーザー企業の内部人材ではすぐに対応できないことが多いため、ベンダー企業が内製開発へ移行するための支援や、伴走しながらスキル移転することに対するニーズが生ずると考えられる。

 ベンダー企業はこうした事業機会を顧客企業への客先常駐ビジネスとするのではなく、対等なパートナーシップを体現できる拠点において、ユーザー企業とアジャイルの考え方を共有しながらチームの能力を育て(共育)、内製開発を協力して実践する(共創)ことが望ましい」

 共育・共創では、外部依託時の契約形態の見直しも必要です。DXによりアジャイル開発やDevOpsなどが進むにつれ、共に作り上げ、かつ継続的に改善を続けるために準委任契約を結ぶケースが増えています。ウォーターフォール型開発では、外部に発注したシステムやソフトウェアなど成果物が納品されれば契約が終了する業務委託契約が中心でした。

 近頃は、大手システムインテグレーターなども率先して、伴走型支援や準委任契約を提案するケースが増えています。そうした伴走支援サービスや契約形態を活用し、自社に最適な開発形態や手法、技術や機能を探りながら、内製化を進めていく必要があるでしょう。

 内製化は「システム開発の主導権をユーザー自身が取り戻すための取り組み」だとも言われます。しかし、DXを代表に、システム開発とビジネスの一体化が、ますます進んでいく今、システム開発の主導権を取り戻すことは、ビジネスの主導権を握ることに他なりません。

 それだけに内製化は、経営層から現場までの全社が熱意を持って取り組むべき課題であり、それこそが成功の鍵を握っているのです。

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