- Column
- 物流イノベーションのためのデータ利活用と標準化
持続可能な物流ネットワークをデータ連携と共創で実現する
「物流データ利活用フォーラム」より、フレームワークスの秋葉 淳一 氏
フレームワークスは、大和ハウスグループで物流関連システムの開発・提供を担う戦略企業である。同社の代表取締役社長CEO(講演時。現会長)の秋葉 淳一 氏が、物流業界に跨がってのデータ活用の促進を目的に2022年10月に開催された「物流データ利活用フォーラム 2022」に登壇し、サプライチェーンにおけるデータ活用の有用性や企業・業界を超えた共創の重要さなどについて解説した。
「物流業界においてデジタル技術やデータを活用している企業は、まだまだ少ない」−−。大和ハウスグループで、物流のためのシステムやサプライチェーン管理のためのクラウドサービスを提供するフレームワークスの代表取締役社長CEO(講演時。現会長)である秋葉 淳一 氏は、こう話す(写真1)。
持続可能な社会のために物流が担う範囲が拡大している
「ヒト」「モノ」「カネ」が経営資源だと言われて久しいが、これに近年は「情報・データ」が加わった。環境経営の観点からも、その重要度が高まっているサプライチェーンマネジメントの目的は、「無駄に作らない」「無駄な在庫を持たない」「無駄に動かさない/運ばない」である。だが秋葉氏は現状について、こう指摘する。
「『無駄なく』という言葉はSDGs(持続可能な開発目標)にもリンクしており、そこに取り組む企業が増えている。SDGsへの貢献も物流やSCMの範囲になってきた。しかも、環境課題に取り組んでいないことが企業にはマイナスになる時代だ。だが、どんな無駄があるかを知るためには情報・データが必要にもかかわらず、物流業界の情報・データへの関心は必ずしも高くない」
従来、物流の範囲は、商品の生産から流通、販売を経て顧客の手に届けるまでとされていた。それが、SDGsが掲げる持続可能性を追求しようとすると、商品のリユースやリサイクルまでを含めた新しい経路を考慮する必要がある(図1)。
加えて、EC(電子商取引)ビジネスの拡大で「消費者は『送料無料』を“当たり前”と感じるようになるなど事業構造が顧客中心になっている。結果、物流事業者は市場環境に振り回される立場に変わった」(秋葉氏)。そんな経営環境下にあっても、「データを活用している企業は将来を鮮明に予測し、大胆な戦略や方針を打ち出している」(同)という。
データ分析に基づいて販売戦略を設計している事例として秋葉氏が挙げるのが、SPA(製造小売業)のファーストリテイリング(ユニクロ)とワークマン。両社はデータ分析により、「コロナ禍でオンライン店舗での購入が増え、宅配需要が増すなか、オンラインで購入した商品を店頭で受け取る「BOPIS(Buy Online Pickup In Store)のニーズが出現していることを把握している)と秋葉氏は話す。
例えばファーストリテイリングは2021年10月、BOPISの割合が40%になっていることを発表。ワークマンは2022年4月、5年後をめどにECでの宅配を止め店頭で受け取るBOPISに一本化する方針を打ち出した。
そのワークマンの店舗数は、現在は1000店未満だが、5年後は1100〜1200店舗に増やす計画だ。店舗の拡充によって、店舗受け取りという一見手間のかかる販売方法に対しても消費者の理解を得られるとの考えがある。
BOPIS強化という戦略の背景には、「スマートフォンの普及が象徴するように顧客接点の変化がある」(秋葉氏)。「従来は、店頭に並ぶかカタログに掲載された商品しか買えず、売り手が買い物をコントロールできていた。しかし、スマートフォンが普及し主導権は消費者に移り、複数の販売チャネルを活用しながら商品購入に至っている」(同)のが現状だ。