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  • 物流イノベーションのためのデータ利活用と標準化

加工食品のサプライチェーンの最適化は卸がメーカー・小売りに働きかける

「物流データ利活用フォーラム」より、日本加工食品卸協会の時岡 肯平 氏

阿部 欽一
2023年4月19日

コロナ禍になり自宅で調理する“内食”への需要が従来になく高まり、加工食品の流通量も急増した。日本加工食品卸協会 専務理事の時岡 肯平 氏が、2022年10月に開催された「物流データ利活用フォーラム2022」に登壇し、加工食品業界におけるサプライチェーンの課題と、その解決の方向性を示した。

 「生活必需品である加工食品業界のサプライチェーンは、いわば社会的インフラを担っていると言っても過言ではない。ただ、メーカーと中間流通・卸と小売のそれぞれが物流や情報システムの個別最適を図ってきたため、必ずしも全体最適にはなっていない」−−。食品卸の業界団体である日本加工食品卸協会(日食協)専務理事の時岡 肯平 氏は、こう指摘する(写真1)。

写真1:日本加工食品卸協会(日食協)専務理事の時岡 肯平 氏

物流サービスは“競争”領域から“協調”領域に

  1977年に設立された日食協は、2022年に45年周年を迎えた食品卸の業界団体だ。「生鮮食品を除き、口に入るものはすべて扱っている」と時岡氏は説明する。

 取引先であるメーカーや小売業者には、大小さまざまな規模があり、その数も多いのが特徴だ。「大手卸であれば1万社のメーカーと取引することも珍しくない。対小売りでは、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアを含めた店舗数は10万を数える」(時岡氏)。ただ加工食品卸は、商社系・独立系とも大手事業者に集約されており、「日食協に加盟する94社のうち上位10社だけで売上高全体の95%を占める」(同)

 さらにサプライチェーンで扱う商品は多品種・少ロットが基本であり、物流やデータ処理への負担が大きい。かつてはサプライチェーンにおける物流サービスは、「競争領域とされ情報システムを含め各層で独自に発展してきた。だが昨今は、物流、情報システムとも一定レベルに達し、協調領域にあるとの認識が進んでいる」と時岡氏は説明する。

 さらに昨今は、「2024年問題」も影を落としている。トラックドライバーの長時間労働の是正を目的に2024年4月から適用される働き方改革関連法への対応が業界にも少なからずインパクトを与えると見込まれている。

 情報システム面でも、公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)を2025年ごろまでに段階的にIP(Internet Protocol)網へ移行する「PSTNマイグレーション」が進む。だが「この流れに従来型EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)が対応できるかが問題視されている」(時岡氏)

 そうした中で、業界が取り組むべき課題として時岡氏は、(1)持続可能な物流の構築と(2)サプライチェーンをつなぐデータ基盤の構築の2つを挙げる。「前者ではサプライチェーン全体を俯瞰すると持続可能な物流の効率化が、後者では個社レベルで進める標準化ではなく、業界全体が全体最適に向けた効率化・標準化が、それぞれ課題になっている」(同)とする。

対メーカー、対小売りで電子伝票の利用率や標準化の進度が異なる

 加工食品業界の受発注において、メーカーと卸間では業界VAN(Value Added Network:付加価値通信網)の「FINET」が利用されている。約1500社のメーカーが参加しEDI化が進むものの、「そのカバー率は、加工食品業界全体の社数からすれば15%程度。多数を占める中小メーカーと卸間の効率化・標準化が課題だ」(同)という。

 卸と小売り間の受発注は、多数のVAN業者を通じてやり取りされている。そこでは「現状は卸側への負荷が高い。流通BMS(Business Message Standards:ビジネスメッセージ標準)の普及率も3〜4割程度にとどまっている」と時岡氏は話す(図1)。

図1:加工食品のサプライチェーンにおける商流と物流の現状