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- 製造DXの最前線、欧州企業が目指す“次の一手”
スイスSika、建設業のDXをスマホアプリや3Dプリントなどで支援
スイスSikaサービス 法人建設・特定市場コンクリート 市場開発マネジャー カーステン・リーガー氏
対デジタル化
スマートフォン用アプリケーション「Sika Mix Design」と「Sika Sand」を開発し、建設業界に向けて提供している。Mix Designはコンクリートの配合設計を最適化することで無駄な資源を削減するためのアプリ(図2)。Sandは、コンクリートに含まれる材料の粒子を分析できるアプリだ。いずれも、「コンクリートの持続可能性を高めながらCO2削減に貢献する」(リーガー氏)とする。
建設現場における工期やコストの削減に向けたデジタル化にも取り組む。コンクリートを運ぶミキサー車にセンサーを取り付け、コンクリートの特性を測定できるようにしたのが、その一例。一般には建設現場で熟練工がテストしているが、ミキサー車が現場に到着した時点で特性を把握できるようにした。
コンクリートを補強するために鉄筋に加えて繊維を使用する際の、最適な補強のための繊維の配合を推奨するアプリも開発している。
対最適化
最適化とコスト削減の鍵になるのが型枠を使った工法の変革である。Sikaの本社建物を調査したところ、「部材コストの45%が型枠に関係していた」(リーガー氏)という。この型枠を不要にするアプローチの1つとしてSikaは3Dプリンティングの可能性に期待する。
例えば、建物内の柱への3Dプリンターの適用が、その1つ。柱の外装を型枠を使わずコンクリートを扱える3Dプリンターで印刷。それを現場に運び、内側に構造用鉄筋を設置してコンクリートを充填する(図3)。リーガー氏は、「型枠の設置や片付けの必要がなく、現場でのムダがないため非常に効率的だ」と語る。このコンクリート用3Dプリンターは、「カラー印刷も可能で、表面のデザインフォーマットも複数対応している」(同)という。
型枠を使わない工法を考えるとき「補強が必要なために3Dプリンティングでは対応できない場合がある」(リーガー氏)。そこでSikaが開発したのが「Mesh Mould」という技術だ。3Dデータを基にロボットが補強材となる鉄筋を、コンクリートが流れ出さず補強材に留まる構造に編み上げることで、型枠を使わずに種々のデザインに対応できるようにした(図4)。
必要なテクノロジーはすでに実在している
リーガー氏は、「建設業界のDXに向けて必要なテクノロジーはすでに実在している」と話す。必要なのは、「保守的な業界にあっても、それら新しいテクノロジーを活用していくことであり、そのための基準作りを公共部門から主導していくことだ」(同)と指摘する。「新しいテクノロジーの門戸を開くためには、リサイクル材の使用を許可する基準や、現場で新しいテクノロジーの使用を許可する基準が必要」(同)だからだ。
そのうえで、「安全基準を設けCO2排出量を削減するためには、原材料から輸送現場での材料配置までの全工程において、品質管理を強化しなければならない。そのためにも、多くの可能性を秘めたデジタル化への一歩を踏み出す必要がある」(リーガー氏)と強調した。
リーガー氏による講演動画「建設DXに向けたスイスSikaの取り組みと挑戦」をこちらで、ご覧頂けます。