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  • カメラがセンサーに、画像認識で進む“状況”のデジタル化

画像認識技術が監視・防犯カメラを多用途の“センサー”に変える

画像センシング専業メーカーのi-PROだから提供できる強みとは

2023年10月19日

種々のニーズに合わせたAIアプリケーションを用意

 こうしたAIカメラの新しい活用を可能にしているのが、i-PROが用意する各種のAIアプリケーションである。多数のモノ(クルマや二輪車など)や人や顔の画像を学習したAIモデルに基づいている。

 例えば、上述した駐車場の利用を可能にしているのが「AI動体検知アプリケーション」と「ナンバー認識アプリケーション」だ。前者が、クルマや二輪者、人の動きをとらえ、侵入や逆走、滞留、ラインクロスなどを検知。後者がナンバーを読み取りサーバー側にあるナンバー情報と照合し、入場ゲートを開閉する。

 「AI状態変化検知アプリケーション」は、映像上の状態変化を検知するためのもの。展示物の持ち去りや商品棚の欠品、扉の開放、車の停車などをリアルタイムに検知しアラートを出す。

 昨今の個人情報保護やプライバシーへの関心の高まりに対応した「AIプライバシーガードアプリケーション」も用意する。人の姿や顔を検知し、必要に応じて人物全体あるは顔部分にモザイクをかけてプライバシーを保護した映像をモニター上に流せる。並行して、顔や姿が正しく映る映像の録画も可能だ。

 AIカメラの利用用途が、「より業種・業務ノウハウを求めるようになってきていている」(松田氏)ことから、パートナー企業が開発するi-PRO用AIアプリケーションも増やしている。先に挙げた介護施設での転倒や白杖・車いすの利用者が困っている状況などを検知するAIアプリケーションは、パートナー企業のモルフォAIソリューションズが開発した。

 他にも、ファーマーズサポートが開発する牛の畜産農家向けシステムでは、カメラで映した牛の映像から、繁殖に必要な兆候・変化をAIが捉えて知らせることで、タイミングを逃さず最適な処置を施せる。より安全な分娩・繁殖を実現するための仕組みで、適切なタイミングで見回るといった飼養管理の負担を軽減する。

 ネクストシステムは、映像から人の骨格を推定し、特定のエリアにおける作業がマニュアルにあるルールに沿った人数で行われているかどうかを検知するシステムを開発・提供する。マニュアルで一人作業を禁止している製造現場や金庫内、薬品を取り扱う場所などでの利用を想定する。

アプリケーション開発用SDKは利用企業にも無償提供

 各種アプリケーションの開発をうながすためにi-PROは、ソフトウェア開発キット「i-PRO CAMERA SDK」をパートナー企業だけでなく最終の利用企業にも無償で提供する。同SDKにはサンプルコードとライブラリー群、マニュアルなどが含まれる。

 i-PRO CAMERA SDKで開発するアプリケーションでは、各社が独自に開発したAIモデルの利用もできる。その際は、i-PROが用意する「AIモデル変換ツール」を利用し、独自のAIモデルをi-PROのAIカメラ上で動作するAIモデルに変換する。

 加えてi-PROは、SDKで開発したAIアプリケーションの動作確認のためのPoC(実証実験)環境も用意する。同社のクラウドカメラサービス「i-PRO Remo.」を使い、AIカメラからPCやタブレットへのアラームメールの送信や、録画映像の確認、映像のダウンロードなどの動作を確認する。AIカメラの死活状態の確認や再起動といった管理者向け操作の確認もできる。

 SDKやPoC環境を整備する理由を松田氏は、「AIカメラの利用範囲を拡大し顧客ニーズに応えるには、パートナー企業や顧客自身が持つ業種・業務ノウハウをAIアプリケーションに組み込んでいただきたい。AIアプリケーションの開発作業支援は当社の重要なミッションの1つだ」と説明する。

 i-PROは現在、AIカメラとして、さまざまなラインナップを展開している(写真2)。屋内・屋外設置用モデルや、複数カメラを1台のきょう体に収めたマルチセンサーカメラ、カメラの向きをリモートから変えたりズームしたりの操作ができるPTZカメラなどだ。手のひらサイズの「i-PRO miniシリーズ」もある。

写真2:i-PRO製AIカメラのラインナップ。左は「i-PRO Sシリーズ」、右は手のひらサイズの「i-PRO miniシリーズ」

 これらi-PROのAIカメラは、1台のカメラの中に複数のAIアプリケーションをインストールして同時に使用できる。「設置したい場所に合わせた機種を選択し、1台のカメラに複数のAIアプリケーションを組み合わせることで、AIカメラの利用範囲をさらに広げられる」(松田氏)というわけだ。