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HOW MUCH:D2C事業において重要な定量データと定性データをどう統合し分析するか【第7回】

堀田 顕人(電通デジタル コマースマーケティング部門コマースデザイン部第1グループ)
2024年8月13日

(2)定性データを活用した顧客体験の深い理解

 定性データには、商品レビューやカスタマーサポートのフィードバック、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のコメント、顧客インタビューなど、種々の手法によって得られる顧客の“生の声”があります。これらのコメントをモニタリングすることで、顧客が製品/サービスを実際、どのように利用しているのかをリアルタイムに知ることができます。

 例えばオンラインレビューは、顧客が製品/サービスに対して具体的に感じたことを共有する場です。ポジティブなレビューからは何が顧客に満足をもたらしているのかが分かり、ネガティブなレビューからは改善が必要な点を具体的に把握できます。

 顧客がメールで送ってきたフィードバックは、製品/サービスに対する具体的な改善点を示す重要な情報です。顧客が直面した問題や不満点を迅速に理解し、早急に対応することで、顧客満足度を大きく高められます。SNSプラットフォーム上での顧客のコメントやレビューも非常に価値があります。

 直接的な顧客インタビューやアンケートは、顧客の感情や体験について深く理解するための強力な方法です。顧客が特定の製品/サービスについて具体的にどう感じているのかを深掘りできます。インタビューやアンケートは、定性的なデータを収集するための有効な手段であり、顧客の言葉を通じて直接的なフィードバックを得られます。

(3)定量データと定性データの統合方法

 上述した定量データと定性データは、相互に補完し合う関係にあります。例えば、定量データでは、リピート購入率が低い状況に直面した際、製品レビューやカスタマーサポートへのフィードバックを分析することで、その原因を特定できます。顧客がどのような経路で製品/サービスに触れ、どのような体験をしているのかを可視化するために、顧客ジャーニーマッピングを作成します。数値データから見えてこない顧客の感情や行動パターンを深く理解できます。

 定性データでは、製品レビューやカスタマーサポートフィードバック、SNSへのコメントといったテキストデータを自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)や感情分析ツールを使って解析します。大量のテキストデータから顧客の感情や共通の問題点、満足要因を抽出できます。

 こうした定量データと定性データを統合し、進捗状況をリアルタイムにモニタリングできるダッシュボードを構築します。全社的に顧客体験の現状を共有し、データに基づいた迅速な意思決定をサポートします。

 顧客からのフィードバックは定期的に収集し、それに基づいて製品/サービスを改善するフィードバックループを確立します。学習と改善のサイクルを回すことで、継続的に顧客体験を高められます。このプロセスでは、顧客の声を製品開発やマーケティング、カスタマーサポートなど各部門にフィードバックし、具体的なアクションを実施します。

 定量データと定性データを効果的に活用することで、D2C事業における目標設定、パフォーマンスの測定、顧客体験の改善を総合的に実行できるようになります。数値目標に基づく透明な合意形成と、顧客の声に基づく質的な洞察を統合することで企業は、データ駆動型の意思決定を強化し、持続的な成長と競争優位性を実現できるのです。データの力を最大限に引き出し、顧客満足度を高めるための継続的な取り組みが、今後のビジネスの成功を支える鍵になるでしょう。

 次回は、5W3Hのうちの「HOW TO」の1つである、D2C事業を推進するうえでの新規顧客向けの認知・集客施策について説明します。

堀田 顕人(ほった・あきと)

電通デジタル コマースマーケティング部門コマースデザイン部第1グループ。マーケティングやコミュニケーション領域を対象にしたプロジェクトマネジメント専門会社で不動産やスポーツマーケティングなど幅広い業界の大規模プロジェクトを経験。雑貨・文具プロダクトの事業会社ではブランドマネジメントから広報やEC運営、SNSなど集客からCRMまでのコミュニケーション全般における戦略立案・施策実施業務に従事。現在はD2C事業の立ち上げ・事業計画策定からサイト構築、グロース支援などを幅広く担当している。