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商品データ整備に向けた商品情報収集で起きている問題【第3回】

池内 優嗣(Lazuli COO)
2025年4月7日

商品情報収集が「DX・AI活用」を阻む要因に

 これら3つの壁は、単に現場に苦労を強いるだけでなく、企業全体のDX推進やAI活用にブレーキをかける要因になっています。

要因1:作業負担と人件費の増大

 商品数が数千〜数万点に及ぶ企業では、手作業による情報収集だけで膨大な時間と人件費がかかります。手作業では誤りも発生すれば、現実的でない作業負担に直面し、商品データの活用を諦めたり最低限の項目のみで利用したりするケースも少なくありません。

要因2:データ品質の低下による検索漏れと購買率の低下

 急いで情報を埋めた結果、表記揺れや誤入力が発生すれば、サイト内検索でヒットしづらい、Google検索に引っかからないといった問題が生じます。必要情報が不足すれば、消費者も商品を比較・判断できず、結果的に売り上げ機会の損失につながります。

要因3:データ活用・分析の遅れ

 AI活用やデータ分析には、高品質なデータが不可欠です。しかし、元データが不揃いで誤りが多ければ、分析精度が低下し、AI技術導入や施策の実効性が損なわれます。データ整備という作業にリソースを取られ、肝心の分析や、他の重要な業務に手が回らなくなるケースもあります。

解決の糸口は商品データの収集・統合の効率化

 商品情報の収集段階における課題を解決するためには、手作業依存から脱却し、AI技術を活用してデータの収集・統合の効率を高めなければなりません。

 上述したように、取引先から異なる形式で届くデータや、社内の複数部署にあって、それぞれが違う項目で管理しているデータ、あるいはGoogleなどで検索して作成した商品データなど、企業の内外に別々に存在している商品に関するデータを集め統合することは、非常に煩雑で、時間と労力を要します。

 技術の進化により、データの量と種類は不可逆的に増え続けています。そうした中で手作業にのみ頼っていては、いつまで経ってもデータの収集・統合はできず、AI技術の活用やデータの分析といった施策を実施できないままになってしまいます。

 こうした状況に対応するために、データの収集・統合業務にAI技術を適用し、業務効率を高める企業が増えています。そのための手段の1つにPDP(Product Data Platform:製品データ基盤)があります。PDPが提供する商品情報データを参照することで、データの収集効率を高められます。社内外にサイロ化しているデータをPDPに格納すれば、バラバラだった形式のデータの統合が可能になります。

 デジタル時代の競争力はデータに左右されます。しかし実際の現場では、まだまだデータを集める段階で疲弊し、テクノロジーをうまく活用できないなど、成長の足かせになってるのが実状です。

 データの「収集 → 生成・加工 → 活用」という活用プロセス全体を俯瞰したうえで、データの収集フェーズの効率化に向けた仕組みづくりが急務です。商品データの収集業務を圧倒的に効率化することが、業務効率化やデータ品質の向上、そしてAI技術活用促進につながり、事業成長を加速できるのです。

池内 優嗣(いけうち・ゆうじ)

Lazuli COO(Chief Operation Officer:最高執行責任者)。2003年リクルート入社。営業、マーケティングを経験の後、デジタルマーケティングを全社横断で統括する組織にて各事業のグロースを支える。2013年より三井物産ヘルスケア事業本部で事業開発、M&Aに従事。FRONTEO 社長室勤務を経て、2020年にLazuliを萩原静厳と共同創業。2003年東京大学文学部歴史文化学科美術史学専修課程 修了、2013年MBA(Trinity College Dublin)取得。