• Column
  • データ駆動型経営が求める商品マスターの作り方

商品データ整備に向けた商品情報収集で起きている問題【第3回】

池内 優嗣(Lazuli COO)
2025年4月7日

前回は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やAI(人工知能)技術などのテクノロジー活用における商品データの重要性と、商品データに関して企業が直面している課題について説明しました。今回は、商品データの整備における課題の中から、商品情報を集める段階で直面している問題について掘り下げます。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みやAI(人工知能)技術の活用が企業競争力の源泉になる中、その成否を左右するのが「データ」です。特にメーカーや小売業においては商品データの整備が不可欠です。しかし、多くの企業では、商品情報を集める段階、すなわち「商品情報収集」において大きな壁に直面しているのが現状です。

商品情報収集に潜む3つの壁

 商品データの整備は大きく、収集、生成・加工、活用に分けられます。多くの現場では、最初の収集段階から疲弊しているのが実状です。そこには(1)取引先ごとに異なるデータ形式、(2)社内データの分散、(3)外部(ネット)情報頼みの場当たり対応の3つの壁があります。

壁1:取引先ごとに異なるデータ形式

 小売業やメーカーが商品を仕入れる際、サプライヤーや工場ごとに、発注書や仕様書、マスターデータなどを受け取ります。ですが、それぞれが、それぞれのデータ形式を採用しています。列の項目が全く異なるExcelファイルが、いくつものサプライヤーからメールに添付されて送られてくるのです。これらを自社システムに登録するためには、項目の統一など人手による修正や補完が必要になり、膨大な時間と労力がかかります。

▼現場の声
 「仕入れ先から来るExcelやPDFを開き、1つひとつ自社のマスター項目に転記する作業に追われている。色やサイズ表記も各社バラバラなので、確認しながら統一していくのが本当に大変」(小売業の商品マスター担当者)

壁2:社内データの分散(サイロ化)

 商品情報は、生産管理、営業、マーケティング、EC(電子商取引)、商品部など、それぞれの部署の業務が円滑に進むよう、個別最適化されて管理されているケースが多々あります。同じ商品でも、ある部署では必要なデータ項目が、別の部署には存在しないなど、異なる形式で管理されているのです。

 特にECでは、消費者に向けた商品データ項目が必要ですが、オフラインでの受発注では不要な種類のデータのため、社内で管理されていないケースも珍しくなく、情報集めに奔走する担当者が少なくありません。

▼現場の声
 「ECで新商品を登録するために毎回、開発部や営業部に情報を聞いて回らなければならない。それでも足りない部分は結局、ネットで調べたり自分で埋めたりしている」(消費財メーカーのEC担当者)

壁3:外部(ネット)情報頼みの場当たり対応

 壁2で示したように、社内や取引先から必要な情報を得られない場合、EC担当者は商品情報をGoogle検索などで探したり、他社のECサイトやメーカー公式サイトを参考に情報を補完したりすることになります。この作業には時間がかかるうえ、手作業のため商品情報の表記揺れや誤りが一定発生してしまいます。

▼現場の声
 「ネット検索で見つけた情報を手作業でExcelにコピーし、必要があれば加工して登録している。1商品に平均45分を要し、とても全商品をカバーし切れない」(食品メーカーのEC担当者)