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- データ駆動型経営が求める商品マスターの作り方
なぜ今、商品マスターが注目されるのか?【第1回】
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DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む大きな目標の1つはCX(Customer Experience:顧客体験)価値の向上です。そのために各種データが分析されています。ですが、なかなか成果が出ない背景には、商品に関するデータが実は十分に整備されていないことがあります。今回は、CX価値の向上において商品データがいかに重要かについて説明します。
皆さんは、仕事を進める中で、次のような課題を感じたことはありませんか。
「分析用の商品データを準備するのが大変すぎる。膨大な項目にフラグを立てるのは本当に骨が折れる作業だ」
「世の中の商品を分析するためにインターネットで商品を検索し、何度も何度もコピペする単純作業は苦行でしかない」
「EC(電子商取引)サイトの別に商品説明や関連タグを付けるのが大変。商品数が数千もあるのに1つひとつ手作業で対応しなければならない。しかもECサイトによって文字数制限が違う」
「ロングテール商品でも適切な関連商品が表示されるよう設定したいが、うまくいかない」
「競合他社の商品データベースを構築したいが、リソースが足りず実現できない」
「自社の商品データが部署ごとにバラバラに管理されており、商品IDすら統一されていない」
「商品データを表計算ソフトウェアで管理しているため、他システムとのデータ連携ができず、常に手作業での加工が必要だ」
「社内外の商品に関するデータを名寄せ・統合するのに時間がかかる」
「マーケティング施策において基幹システムの商品マスター情報を参照したいが膨大なコストが掛かる」
デジタルやITといった領域を主戦場にしている方なら、上記のような経験が少なからずあるでしょう。
商品情報の重要性が高まるほど取り扱いの負荷も増える
多くの企業が現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、AI(人工知能)技術の活用や新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいます。そしてCX(Customer Experience:顧客体験)価値の向上を図るために、社内外のデータを分析し、仮説に基づく施策を立案・実行し、振り返り、次の施策につなげようともしています。
分析対象になるデータには、多くの種類が存在します。共通情報を扱う「マスターデータ」だけを見ても、商品マスターはもちろん、会員情報マスター、店舗マスター、従業員マスターなど、実に多くのデータがあります。
これらマスターデータを元にしたトランザクションデータとしては、売り上げデータ、ID-POS(Identification-Point of Sales:顧客IDと紐付いたPOS)データ、Webサイトの購買/行動データ、在庫データなどが日々、作成されています。
商品情報に関するデータや、それに基づく施策においては、上述したような、かなりの労力や時間を使わざるを得ない業務が多々、発生します。それが原因で、分析・施策の実行自体を諦めてしまっているケースも少なくないでしょう。
ただ、商品データに関する課題は昔から存在していました。人手をかけながらなんとか都度対応する企業もあれば、データ活用そのものを諦めた企業も多いようです。しかしながら、商品情報の重要性は年々、高まる一方です。それに伴い企業がデータを扱うための負荷も増えています。その要因は次の3つです。
要因1:データの収集・統合=レコード(行)数が増える
データ自体が年々増え、データを集めて管理することが難しくなっています。社内外から商品に関するデータを収集するのは意外に難しいようです。
社外、すなわち他社の商品情報を収集し、同じ形式にするのは難しいでしょう。ただ自社の商品情報でも、社内でデータがサイロ化しており、かつ消費者目線で作られた商品データが存在せず、分析やデジタル領域ではすぐには活用できない例が散見されます。筆者は実際、ある企業の方から「自社のWebサイトの商品情報をひたすらコピペして収集している」という話を聞いたことがあります。
要因2:生成・加工=カテゴリーやタグなど必要なカラム(列)の数が増える
集めてきたデータに必要なデータを加える生成・加工に膨大なリソースがかかっています。データ活用において、この生成・加工のプロセスは不可欠です。データを収集・統合できても、その分析・活用に使用するソフトウェアやサービスなどが求める形式で商品情報をアウトプットする必要があるからです。