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  • 今こそ問い直したいDXの本質

そもそもAIを中心に物理世界を見ることはできるのか【第26回】

AIの広がる姿が想像できないあなたへ

磯村 哲(DXストラテジスト)
2026年7月31日

見えないAIは、どこで動作しているのか

 さて、この場合、AI技術はどこにあるのでしょうか。インターネットは、どこかにあるものではありません。世界中に1つだけです。なので英語では「the Internet」 と表記します。しかしAI of Thingsの場合には、いくつかのパターンが考えられます。

 伝統的なAI技術の場合は、人間の“脳”に相当する明確な情報中枢があります。連動するデバイスは、あくまでセンサーやアクチュエーターの扱いで、情報を解析するのもアクションを指示するのも中央の1カ所です。

 マネジャーとプレーヤーのような構成もあると思います。人間の要望を受け付けるAIシステムがいて、そのAIシステムが、それぞれのデバイスに配置されたAIエージェントに情報を問い合わせ、計算エージェントに計算してもらい、デバイスたちに結論を伝えるパターンです。米Amazon.comの音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」が賢くなって、一言発すれば部屋中のデバイスと通信し制御してくれるようなイメージです。

 もっと民主的なやり方も、あるかもしれません。人間がどこかで声を発すると、聞きつけたデバイスが周辺のデバイスと相談して制御する形です。

 もちろん、いずれのAIシステムもサイバー空間と接続されているため、人間が物理空間で声を発しようが、チャットで発言しようが同じです。「そろそろ準備の時間」というチャットを見てタクシーを手配してくれたり、パーティーで名前を思い出せない人の情報を検索してそっとイヤホンで伝えてくれたりと、物理世界とサイバー空間を自由に行き来する形で動作します。いつも人間がトリガーとは限らず、自律的にサイバー世界と物理世界で働き続けるAIシステムもあるでしょう。

 AI of Thingsは、まだ確立された概念ではありません。思い思いに、それぞれの人が語っているだけです。本稿のようにAI技術を真ん中に据えていることもあれば、AI Poweredなロボットをイメージしていたり、AIエージェントがデバイスを操作する程度の話もあったりします。

 概念が定まることで新たな発想が浮かぶことはよくあります。ですから、言葉の定義にこだわり、議論やインスピレーションの核にすべきだと筆者は考えています。

磯村 哲(いそむら・てつ)

DXストラテジスト。大手化学企業の研究、新規事業を経て、2017年から本格的にDXに着手。その後は中堅製薬企業等でDXに従事し、現在は準大手ゼネコン企業のDX・IT責任者を務める。専門はDX戦略、データサイエンス/AI、デジタルビジネスモデル、デジタル人材育成。個人的な関心はDXの形式知化であり、『DXの教養』(インプレス、共著)や『機械学習プロジェクトキャンバス』(主著者)、『DXスキルツリー』(同)がある。DX戦略アカデミー代表。