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  • データ分析/生成AI活用を成功に導くためのデータ連携入門

データ連携の本質は「必要な人に、必要なデータを、正しい状態で届ける」こと【第10回】

高坂 亮多(セゾンテクノロジー CTO)
2026年8月12日

生成AIの時代にもデータ連携の積み重ねが生きる

 生成AI技術の登場によって、データ連携の重要性が急に高まったように見えているかと思います。しかし実際には、これまで積み重ねてきたデータ連携の考え方が、そのままAI時代にも生きているだけです。実際に利用したいデータの多くは、クラウド上の新しい仕組みではなく、長年稼働してきた基幹システムの“奥”に眠っています。

 ここで大切なのは「AIシステムをどこにつなぐか」ではなく、「どのデータに、どのようにアクセスさせ、どこまでの操作を許可するのか」の設計です。AIシステムに適切な仕事をさせるには、その手前で、データが整い、意図した形でつながっていなければなりません。

 第7回で述べたように「間に落ちる業務」を拾い上げ、透明性のある形で仕組み化することは、AIシステムに渡すデータの出どころや処理過程を明確にすることでもあります。地道なデータ連携と構造整理の積み重ねが、AIシステムの利用を一時的なPoC(Proof of Concept:概念実証)で終わらせず、継続的な業務成果につなげる力になります。

 PoCについて強調したいことは、業務部門が「何ができるか(What)」を、IT部門は「どう続けるか(How)」を見ながらも、両者が「正しいデータで、正しい意思決定をしたい」という同じゴールを目指すということです。データ連携は、決してIT部門だけが進めるものではありません。業務部門が主体的に関わることで初めて、データは“使える資産”になるのです。

 そのためには、業務部門がデータ連携の勘所を理解し「やりたいこと」をIT部門と共通の言葉で語れなければなりません。共通言語がないままに進めれば、PoCは沼にはまり、SaaSは乱立し、同じ数字を見ているはずなのに話が合わなくなります。

 その意味で、業務部門が今日から取り組める“第1歩”が以下です。

●棚卸しをする:自社の業務に必要なデータが、どのシステムやSaaS、Excelなどに、どんな状態で存在するかを洗い出す
●「正」を決める:項目ごとに「この情報はここが正」と決め、情報の流れ(配る・戻す・検知する)を描く
●使える仕組みを確認する:ETL(Extract:抽出、Transform:変換、Load:書き出し)やMFT(Managed File Transfer)など既に社内にあるデータ連携の仕組みや、再利用できる処理を確認する
●切り分けて合意する:「できる」と「続けられる」を分け、業務部門とIT部門がゴールを共有してから進める

データ連携の目的はシステムの接続ではない

 華やかなAI活用やデータ活用の裏側には、必ず地道なデータ連携があります。データがどこにあり、誰が責任を持ち、どのようにつながっているのか--。この構造を理解することが、データ活用や自動化、そしてAI活用の共通した土台になります。

 “つなぐ”という仕事は、利用者からは見えにくいものです。しかし、その積み重ねが、企業全体で同じ事実を共有し、より良い意思決定を支える基盤になります。データ連携の目的は、システム同士をつなぐことそのものではありません。「必要な人に、必要なデータを、正しい状態で届ける」ことです(図2)。

図2:データ連携の目的は「必要な人に、必要なデータを、正しい状態で届ける」こと

 本連載が、読者の現場で「まず何をつなぐべきか」そして「何のためにつなぐのか」を考えるきっかけになれば幸いです。

高坂 亮多(こうさか・りょうた)

セゾンテクノロジー CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)。2007年新卒入社、2025年より現職。流通業向け業務アプリケーションの開発を皮切りに、クラウド移行やモバイルアプリケーション、コグニティブ技術を活用したアプリケーションなど先端技術領域の開発をリードしてきた。近年はデータエンジニアとして分析基盤の構築やAI活用プロジェクトを推進している。