• Column
  • DX戦略を実現する顧客接点強化のための自社アプリの開発・運用の基礎

企画構想こそが自社アプリ開発を成功に導く第一歩【第2回】

小地戸 孝介(フェンリル 開発センター 開発2部 課長)
2025年9月24日

第1回では、自社アプリケーションの開発に成功するには、発注者自身も開発プロセスに積極的に参加することが重要だと説明しました。この積極的な関与は、具体的な開発作業が始まる前の企画構想段階から求められます。今回は自社アプリの企画構想段階における具体的な進め方と押さえるべきポイントを解説します。

 自社アプリケーションを導入するに当たり多くの企業は、曖昧なイメージのまま「こんなアプリが欲しい」と開発ベンダーに相談し、要件定義を始めてしまいがちです。しかし、その前段階である企画構想こそが、プロジェクト全体の方向性を決定づける最も重要な羅針盤になります。

 企画構想は「誰に、何を届け、どのような価値を提供したいのか」を徹底的に考え抜くプロセスです。この段階で自社のサービスや事業におけるアプリの位置づけを明確にし、その実現可能性を探っていくことが、後の開発フェーズでの手戻りを防ぎ、成功確率を飛躍的に高めます。

 以下では企画構想段階にあって特に重要な、ターゲットの明確化とゴールの確定、RFI(Request For Information:情報提供依頼書)、RFP(Request For Proposal:提案依頼書)」について詳説します。

ターゲットを明確にしゴールを確定する

 企画構想の第一歩は、ターゲットの明確化、すなわち自社アプリを「誰に使ってほしいのか」を具体的に定義することです。ターゲットが曖昧なままでは、実装すべき機能やデザインの方向性が定まらず、結果として誰にも響かない、使いにくいアプリになってしまいます。

 ターゲットと言っても、単に「20代女性」や「ビジネスパーソン」など大きな括りではありません。その人物のライフスタイルや日常的な課題、ニーズまでを高い解像度で描くことが重要です。こうした解像度高く設定したターゲットは「ペルソナ」と呼びます。

 ペルソナが設定できれば、アプリに求める機能として、例えば表1のような具体的なアイデアが生まれてきます。

 アプリを届けたいターゲットと提供したいサービスを具体的に結びつけることで、アプリが持つべき機能や提供すべき価値が明確になります。この段階でターゲットを深く理解し、チーム全体で共通認識を持つことが、プロジェクトを成功に導くための確かな第一歩になります。

 ターゲットが定まれば次はゴールの設定です。「アプリをリリースすることで何を実現したいのか」を決めるのです(表2)。ゴールが明確でなければ、開発工程に移っても「あれもやりたい」「これも便利そうだ」などと要望が膨れ上がり、プロジェクトが迷走する原因になります。